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福山弁護士の「飲み法題」


  
       

派遣労働の1年ルール、3年ルールをご存じですか?

 家電製品の製造工場に派遣されて1年契約の仕事についていますが、派遣されてから1 年以上たちました。この場合、派遣先で直接雇ってもらえると聞いたのですが本当ですか。 1 派遣受入期間の制限   労働者派遣法によると、労働者派遣の受入可能期間は、(1)専門性の高い26業務  (ソフトウェア開発等、労働者派遣法施行令第4条所定の業務)、有期プロジェクト業  務(事業の開始・転換・拡大・縮小又は廃止のための業務であって3年以内に完了する  ことが見込まれる業務)、日数限定業務(1か月間の就労日数が派遣先の通常の労働者  の所定労働日数の半分以下かつ10日以下の業務)、産前産後休業・育児休業・介護休  業等の代替業務については無制限とされていますが、(2)製造業は平成19年2月末  日までは最長1年間、その後は最長3年間、(3)その他の業種(一般事務、販売、営  業等は全てここに含まれる)は最長3年間までとされています。このように派遣期間を  制限し、後述するような派遣先への直接雇用を図るルールを1年ルール、3年ルールと  いいます。 2 派遣受入期間の制限ある場合の直接雇用義務  ア (2)と(3)の業務について、派遣労働者を、同一就業場所で同一業務に1年以   上、派遣受入期間((2)は平成19年2月末日までは1年、それ以後3年、(3)   は3年)を超えて従事させている場合、その業務に新たに労働者を雇い入れようとす   るときは、派遣先は他の労働者ではなく当該派遣労働者を遅滞なく雇い入れる義務が   あります(派遣法40条の3)。    このルールの適用される労働者は、@期間経過日までに当該派遣先へ雇用されて同   一業務に従事することを希望する旨、派遣先に申し出た労働者で、A期間経過日から   起算して7日以内に派遣元との雇用関係が終了した者、をいいます。  イ また(2)と(3)の業務において、派遣受入期間((2)は平成19年2月末日   までは1年、それ以後3年、(3)は3年)を超えて使用する場合、派遣先企業には   当該派遣労働者に対し雇用契約の申込義務があります(派遣法第40条の4)。 3 派遣受入期間の制限ない場合の雇用契約申込義務   また(1)の業務についても、同一就業場所で同一業務に、3年以上、派遣労働者を  従事させている場合、その業務に新たに労働者を雇い入れようとするときは、派遣先は  他の労働者ではなく当該派遣労働者に対して雇用契約の申込みをしなければなりません  (派遣法第40条の5)。 4 これらのルールについては、違反した派遣先企業に対して一定の制裁措置が定められ  ています。すなわち、派遣先企業が上記の制限に違反する場合、労働大臣から、派遣先  には、「指導」、「助言」がなされ(派遣法48条1項)、それに従わなかった場合に  は派遣先に「雇用契約の申込または雇入れの勧告」がなされ(派遣法49条の2・1項  2項)、それでも従わなかった場合は「企業名公表」の措置が予定されています(派遣  法49条の2・3項)。 5 従って、設問のケースの場合、製造業は現時点では派遣受入期間が1年に限定されて  いるため、1年ルールの適用があり、派遣先企業は1年を超えて使用する場合、当該派  遣労働者を直接雇用すべき義務を負うことになります。 6 近時、新聞紙上を賑わせているいわゆる偽装請負は、派遣法上の直接雇用義務を免れ  るために行われている脱法的な働かせ方です。労働者派遣自体、使用者としての義務を  一体誰が負うのか不明確である上、多くの派遣労働者が一般に低賃金、無権利状態にお  かれており、本来、正規雇用を促進する方向で解決されるべきものと思われますが、派  遣法上設けられたこのようなルールを企業にきちんと守らせることは最低限の要請とい  えるでしょう。          弁護士 福 山 和 人