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福山弁護士の「飲み法題」

 

魔性のアードベッグ

 ここのところ酒を飲むときには、先発がビール、中継ぎは日本酒、抑 えが焼酎というパターンだった。  それにも飽きてたまにはスコッチでも飲もうかと、とあるバーに入っ た。  一言でスコッチと言っても、何を選べばよいか迷うところ。  「何か旨いスコッチはないやろか?」というビギナー的リクエストに 応えて、酒場の兄ちゃんが勧めてくれたのが『アードベッグ』だ。  最初に「飲みやすいものならこれですが」と言って勧められたのは、 僕も聞いた覚えがあるメジャーな銘柄。主体性のない僕が、「まあ、そ れでいいか」となりかけたとき、「これは最近入荷した物で、あまりオ ススメしませんが・・・」と言って兄ちゃんが出してきたのが『アード ベッグ』。  「これは好き嫌いが激しい酒でね。かなり強烈ですよ。試してみます か?」なーんて挑発的に言われると、急速に『やってやろうじゃないの モード』にスイッチが入ってしまった。  恐る恐るストレートでやってみると・・・。  一口含んだ刹那、広がる衝撃! 「何やこれは?ヨーチンか?」と思 うほど強烈にスモーキーな香りと味。今まで飲んでいたウイスキーは何 だったんだと思うほどだった。   近頃は端麗辛口流行りだが、これは「端麗」とは正反対の強烈な個性。 辛口という意味では超辛口。御世辞にもすっきり飲みやすいなどと言え るような酒ではない。    しかしなんとなく忘れられない感じがあったので、しばらくして近所 の酒屋で見つけたときに、迷わず買って帰った。  それから夜中に独りちびちびやるようになったのだが、そのうち癖に なってしまい、普通のウイスキーが何だか物足らなくなってきた。  ちょっと前に「猟奇的な彼女」という韓国映画が流行ったが、『アー ドベッグ』はさしずめ「猟奇的なスコッチ」だ。  「猟奇的な彼女」の主人公は、強烈な個性で徐々に男を虜にしていっ たが、僕も『アードベッグ』に虜にされてしまいそうである。     弁護士 福 山 和 人


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