空飛ぶ弁護士のフライト日誌 京都法律事務所
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空飛ぶ弁護士のフライト日誌

空飛ぶ弁護士のフライト日誌ログ─DAY14:トンビ先生 

                             機長:古川美和

 空を飛ぶ鳥の中で,ベスト・ソアラー,すなわち上手く風に乗れる鳥ナンバーワンとい えば,やはりトンビだろう。よく晴れた春先の午後に,「フィンヨルル……,フィーンヨ ルルルル……」と螺旋を描いて飛ぶ彼らを見るのは,何とも言えず楽しい。  ゴールデンウィークに家族で海辺の温泉に行ったとき,トンビが数十羽乱舞していた。 子どもと一緒に,久しぶりに無我夢中で見上げていた。下から泡のようにぷくりと浮かび 上がってくる上昇気流のエネルギーを最大限に捉えるべく,トンビはく,くっと羽の角度 を微妙に変え,風を抱え込む。風上に向かってスーッと滑空したかと思うと,波に乗るよ うにふいっ,と速度を緩めて高度を上げ,翼を少し傾けてくるりと左に旋回する。彼はそ のまま旋回しながら上昇する空気に乗り,次第に遠く,小さくなっていく。  ああ,いいな。トンビみたいに飛びたいな。グライダーでどんなに上手く風をつかもう としても,片方7mもある巨大な─トンビからすれば─翼では,小さな風には乗れないの だ。旋回半径も大きすぎるし,翼の角度を変えられないから,風を抱え込むことができな い。私も何度かトンビと同じサーマルで飛んだことがあるが,あっという間に置いていか れた。  それでも,トンビと一緒に飛ぶのはすごくエキサイトな体験だ。いつかなりたい,超え たいけれど超えられない,トンビは永遠の先生なのだ。  でもそんなトンビ先生,優雅に楽しく空の散歩を楽しんでいるのかといえば,そうでも ない。上昇気流のあるところに,昆虫あり。強い上昇気流で否応なく吹き上げられる蝶や 羽虫やその他小さき蛋白源たちを捕らえて食すべく,トンビは今日も上昇気流に乗るので ある。何だ,そりゃ生活がかかってるんだから,飛ぶのも上手いはずですね。  ちなみに1歳9ヶ月になるウチの息子,つい3日ほど前,物心ついて(?)初めて飛行 機に乗りました。乗り物好きだし,私の子だもの,当然飛行機好きだよね,ねっ?と思い きや,途中で「ひこーき,いやー。おりたいようー。」と言い出してがっくり。まあ,彼 がもっと大きくなって,地上に縛られている,という感覚がわかるようになったら,一緒 に空に飛び出して,トンビと共に飛ぶ楽しみを教えてあげたいな,と思う今日この頃であ る。                            弁護士 古 川 美 和 







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