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黒澤弁護士の"知ってますか"

          教育基本法改定雑感

1.愛国心教育がもたらすもの  現在教育基本法改定案が国会で議論をされています。現在の教育基本法は終戦直後の1 947年に制定されたものですが、戦時中の教育が政府の干渉の下に天皇崇拝・愛国心教 育に走った反省を踏まえ、国家による教育内容への干渉を抑制する内容となっています。 ところが、今回の教育基本法改定案では、教育への国家的介入の歯止めが無くなる内容と なっています。  以下は戦中高知県で教員を務められていた方の詩です。愛国心教育がもたらす悲劇が切 実に伝わってくる内容です。  「逝いて還(かえ)らぬ教え子よ 私の手は血まみれだ! 君を縊(くび)ったその綱 の端を私も持っていた しかも人の子の師の名において 嗚呼(ああ)! 『お互いにだ まされていた』の言訳が なんでできよう 慚愧(ざんき)悔恨 懺悔(ざんげ)を重ね ても それがなんの償いになろう 逝った君はもう還らない 今ぞ私は汚濁の手をすすぎ  涙をはらって君の墓標に誓う 『繰り返さぬぞ絶対に!』」。  愛国心を持つこと自体は問題ではありませんが、それはどのような意味でも国家から強 制されるものであってはいけないと思います。 2.一斉学力テストがもたらすもの  現在の教育基本法改定案がとおると、遅かれ早かれ全国一斉学力テストが行われ、習熟 度別クラス編成が実施されることになるでしょう。  一斉テストが実施されている東京都では、成績上位校と言われる学校には、新入生が集 中し、逆に新入生がゼロの学校が生まれています。また、小学校の早い段階から「出来る 子」と「出来ない子」のレッテルが貼られ、選別がされてしまうことになります。現在問 題となっている格差社会の基礎が小学校レベルから形成されることになります。  以下は、元教育課程審議会会長として教育基本法改定を推進した作家の言葉です。教育 基本法改定を進める方の考え方が良く伝わる内容です。  「できん者はできんままで結構。戦後50年、落ちこぼれの底辺を上げることばかりに 注いできた労力を、できる者を限りなく伸ばすことに振り向ける。100人に1人でいい、 やがて彼らが国を引っ張っていきます。限りなくできない非才、無才には、せめて実直な 精神だけを養ってもらえばいいんです。」  子ども達にどのような教育の機会を与えるかは大人の責任ですが、このような考え方の 下でなされる教育を受けた全ての子ども達が幸せになるとは到底考えられません。                             弁護士  黒 澤 誠 司



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