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小笠原弁護士の”知っ得”



  

〜高齢者虐待防止・養護者支援法

 みなさん、こんにちは  先月は、新しい道路交通法の問題点についてお話ししました。違法駐車取締を内容とす る道路交通法改正問題については、6月1日からの施行もあって、多くのTVや新聞、ラ ジオなどのマスコミで取り上げられ、私が想像していた以上の問題点があるように感じま した。また、別の機会に取り上げてみたいと思います。  さて、今回は、この4月1日から施行されている、高齢者への虐待防止、高齢者の養護 者支援の法律についての「知っ得」です。 この法律の第1条は、次のように規定しています。 ┌─────────────────────────────────────┐ │  この法律は、高齢者に対する虐待が深刻な状況にあり、高齢者の尊厳の保持に │ │ とって高齢者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等にかんがみ │ │ 高齢者虐待の防止等に関する国等の責務、高齢者虐待を受けた高齢者に対する保 │ │ 護のための措置、養護者の負担の軽減を図ること等の養護者に対する養護者によ │ │ る高齢者虐待の防止に資する支援(以下「養護者に対する支援」という)のため │ │ の措置等を定めることにより、高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等に関す │ │ る施策を推進し、もって高齢者の権利利益の擁護に資することを目的とする。 │ └─────────────────────────────────────┘  一般の方にはわかりにくいかも知れませんので、少しかみ砕いて説明しますと、まず、 この法律を制定した背景には「高齢者に対する虐待が深刻な状況にあ」るということです。 ┌───────────────────────────────────┐ │ 平成15年度に実施された「家庭内における高齢者虐待に関する調査」によ │ │ りますと │ │ @脅しや侮辱などの言葉や威圧的な態度、無視、嫌がらせ等によって精神 │ │   的情緒的苦痛を与える〈心理的虐待〉が最も多く、63.6% │ │ A必要な介護サービスの利用をさせないとか世話をしないあるいは劣悪な │ │   環境で放置する〈介護・世話の放棄・放任〉が52.4% │ │ B殴る、蹴る等の暴力的な〈身体的虐待〉が50% │ │ C本人に無断で財産や金銭を使用したり、本人の希望する金銭の使用を正 │ │   当な理由もなく制限する〈経済的虐待〉が22.4% │ │ D性的な嫌がらせをする〈性的虐待〉も1.3% │ │ という状況でした。 │ │ また、虐待が最も深刻だった時点での高齢者の状態では │ │ @生命に関わる危険な状態だったのが10.9% │ │ A心身の健康に悪影響がある状態だったのが51.4% │ │ でした。つまり、虐待を受けている高齢者のうち、約1割が生命に関わる危 │ │ 険な状態であり、約半数が心身の健康に悪影響がある状態だったわけです。 │ └───────────────────────────────────┘  このような高齢者虐待の深刻な状況を踏まえ、「高齢者の尊厳の保持にとって高齢者に 対する虐待を防止することが極めて重要である」とした上で、「高齢者虐待の防止等に関 する国等の責務」「高齢者虐待を受けた高齢者に対する保護のための措置」「養護者の負 担の軽減を図ること等の養護者に対する養護者による高齢者虐待の防止に資する支援(養 護者に対する支援)のための措置」等を定めるとしています。 ┌───────────────────────────────────┐ │ 高齢者虐待の防止、高齢者虐待を受けた高齢者の迅速かつ適切な保護、適切 │ │ な養護者に対する支援を行うために │ │ @国及び地方公共団体の責務、役割 │ │ A国民の責務 │ │ B高齢者の福祉に業務上又は職務上関係のある団体、個人の責務 │ │  C市町村の役割 │ │ D都道府県の役割 │ │ E養介護施設の設置者及び養介護事業者の責務 │ │ が規定されています。 │ └───────────────────────────────────┘  このような手段を講じて「高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促 進し、もって高齢者の権利利益の擁護に資することを目的」にしているのです。  次回に、もう少し詳しくお話し致します。 弁護士 小 笠 原 伸 児



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