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小笠原弁護士の”知っ得”



  

〜65歳継続雇用問題(その2)

 みなさん、こんにちは  覚えておいででしょうか。このコーナーの最初にとりあげたテーマは高年齢者の雇用問 題でした。  定年制を採用しており、その定年年齢が65歳未満の事業主は、本年4月1日から少な くとも62歳までの高齢者の雇用確保措置を講じなければならないとされていましたよね。  厚生労働省は、この10月13日、改正高年齢者雇用安定法に基づく高年齢者雇用確保 措置の実施状況について発表しました。  そこで、今回の「知っ得」は、高年齢者の雇用確保措置はどのようにとられようとして いるのか、です。  まず、厚生労働省が発表したのは、6月1日までに報告を提出した51人以上規模企業 81,382社における雇用確保措置の実施状況をとりまとめたもので、その概要は以下 のとおりです。   ◇雇用確保措置の実施状況             実施済み        未実施      企業数   68,324社    13,058社      比 率     84.0%      16.0%   ◇雇用確保措置の企業規模別実施状況                    実施済み       未実施      51人〜300人規模    82.0%     18.0%      301人以上規模       94.4%      5.6%  全体としては、84%の企業が実施済みとなっていますが、規模別に見ますと、中小企 業(51人〜300人規模)が82%であるのに対し、大企業(301人以上規模)が9 4.4%と、規模が大きくなるほど実施が進んでいます。  つぎに、雇用確保措置の上限年齢は以下のとおりです。   ◇雇用確保措置の上限年齢      62歳〜64歳     16,219社  23.7%      65歳         52,105社  76.3%  このように、改正高齢者雇用安定法が定めた段階的な措置の義務のスケジュールよりも 前倒しにしている企業が多くあるという結果になっています。段階的に措置を講ずる面倒 さを回避したということではないでしょうか。  では、雇用確保措置の具体的な内訳はどうなっているのでしょうか。   ◇雇用確保措置の内訳      定年の引上げ       8,829社  12.9%      定年の廃止          830社   1.2%      継続雇用制度導入    58,665社  85.9%   ◇継続雇用制度の内訳      希望者全員対象     22,911社  39.1%      対象者限定       35,754社  60,9%       内労使協定     (24,684社  42.1%)       内就業規則     (11,070社  18.8%)  このように、雇用確保措置のうち、継続雇用制度の導入を行った企業が最も多く、約8 6%にのぼっています。その内、希望者全員を対象とする継続雇用制度を導入した企業が 約39%、継続雇用制度の対象者を限定し、その基準を労使協定で定めた企業が約42% となっています。  最も安定した雇用確保措置が、定年を引き上げたり、定年そのものを廃止したりするこ とだということはおわかりかと思います。そして、希望者全員を対象とする継続雇用制度 も、比較的安定した措置であると言えます。その意味では、高齢者雇用安定法の改正の趣 旨を前向きに活かそうとする企業が32,570社、実施済み企業の47.7%となって いることは、報告のある企業に限定されているとはいえ、評価することができます。  他方、継続雇用制度を導入し、対象者を限定した企業の内、労使協定を締結することが  できず、就業規則によって一方的に対象者基準を定めた企業が11,070社、実施済 み企業の16.2%もあることは、今後の大きな課題といえます。 弁護士 小 笠 原 伸 児  



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