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小笠原弁護士の”知っ得”



  

〜貧困率

 みなさん、こんにちは  2007年を迎えて、新たな気持ちで皆さんとHP上でお会いできることを嬉しく思い ます。本年もどうぞよろしくお願いします。  今回は、昨年末にお話ししました自殺対策基本法とも関連するのですが、日本の社会で 深刻になっている「貧困」について取り上げます。 ■2006新語・流行語大賞   皆さんは、昨年の新語・流行語大賞をご存じでしょうか。  そう、トリノオリンピックのフィギュアスケート金メダリストの荒川静香さんの得意技  である「イナバウアー」ですね。   そして、数学者の藤原正彦さんが書かれてベストセラーとなった『国家の品格』とと  もに広がった「品格」でした。   この流行語大賞は、60の候補語からトップテンが選ばれ、そのトップテンの中から  大賞が選ばれるのですが、その候補語のひとつが「貧困率」でした。   トップテンのひとつに選ばれた「格差社会」とも併せて考えると、格差とか貧困とか  が昨年の世相を現していると言えますね。 ■貧困率   現代用語の基礎知識2007年版によりますと、貧困率とは、人口全体における、所  得が貧困線未満である者の割合を示す指標といわれます。   そして、この貧困線の定義について、日本では生活保護制度の最低生活基準を用いる  ことが多いそうですが、国際比較では、相対的貧困概念を採用し、中位可処分所得の5  0%を貧困線にしているとのことです。   例えば、一世帯あたりの可処分所得(総ての所得から社会保険料や税金などのもろも  ろの経費を差し引いて残った自由に使える所得のこと)の中央値が500万円であると  しますと、その半分の250万円が貧困線となります。 ■日本は第2位の貧困率   2005年に公表された経済協力開発機構(OECD)の報告書によりますと、調査  対象国27カ国のうち、貧困率が高い国は、メキシコ、アメリカ、トルコ、アイルラン  ドの順番で、日本はその次の5番目で、15.3%でした。つまり、人口の15%、6  〜7人に1人が、貧困線未満の生活を送っていることになります。   そして、OECDが2006年7月に公表した、日本経済を分析した報告書によるま  すと、貧困率の高いOECD諸国(平均は8.4%)の順番とその率は次のとおりです。    アメリカ   13.7%    日本     13.5%    アイルランド 11.9%    イタリア   11.5%    カナダ    10.3%   つまり、日本は、アメリカに次いで第2位となりました。 ■かつての「一億総中流」から格差、貧困社会へ   かつて、日本の国民意識は一億総中流と評されていました。それなりに安定した社会  であったのかもしれません。   ところが、この10数年の間に、いわゆる構造改革路線の政治によって著しい所得格  差が進行し、もはや一億総中流の社会は崩壊しました。   そして、あらゆる階層で所得の格差が進み、死語となっていた「貧困」が、新たな装  いをもって浮上してきているのが今の社会ではないでしょうか。   国民の命を粗末にする今の政治は、やはり転換させなければなりませんね。                     弁護士 小 笠 原 伸 児



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