1. >
小笠原弁護士の”知っ得”



  

〜最低賃金制度

 みなさん、こんにちは  風邪などひいてはおられませんか。今年のインフルエンザの特徴は、高熱が出るという ことのようなので気をつけてくださいね。  さて、今回は、1月にお話ししました、日本の社会で深刻になっている「貧困」の原因 に一つになっている「最低賃金制度」について取り上げます。 ■最低賃金制度ってご存じですか    最低賃金制度とは、国が賃金額の最低限度を定めて使用者に対してその遵守を法的   に強制する制度です。    賃金の額は、本来、労使が自由に定めるべきものですが、労使の力関係や社会経済   情勢に委ねきってしまうと、著しく不公正な賃金が定められ、労働者の生存が脅かさ   れるおそれがあるため、国が労使の賃金決定に介入して、その最低限度を設定したの   です。    ですから、使用者はこの金額の賃金以下で働かせてはいけない、と義務づけられた   賃金が最低賃金だといえますね。 ■最低賃金はどうやって決まるの?    最低賃金法上の最低賃金の決定方式としては、@)労働協約に基づく最低賃金と   A)最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金とがあります。    そして、A)の、最低賃金審議会の調査審議に基づき厚生労働大臣または都道府県   労働局長が決定する最低賃金には、@地域別最低賃金およびA産業別最低賃金と呼ば   れる2つの制度があります。    しかし、実際には、わが国の最低賃金制度の基本は、各都道府県ごとに定められる   地域別の最低賃金制度です。これは、各都道府県の地方最低賃金審議会の審議に基づ   き、都道府県労働局長が決定する、当該都道府県の全種類の労働者に適用される地域   包括最低賃金です。    具体的には、まず中央最低賃金審議会が、毎年7月、その年の関連経済・労働指標   を参考にその年の目安としての引き上げ率(額)を決定し、次に各地方最低賃金審議   会が、毎年8月、この目安を参考にしつつ当該都道府県の経済・労働指標を基礎に引   き上げ額を決定するのです。    従来、日額と時間額の2本立てで設定されてきていましたが、2002年(平成1   4年)度からは時間額1本での設定となりました。 ■2006年(平成18年)度の地域別最低賃金改定状況    厚生労働省のHPからアクセスできますのでご覧下さい。    大ざっぱにいうと、東京、神奈川、大阪は719円、717円、712円と710   円台ですが、青森、岩手、秋田、沖縄はいずれも610円で、他に610円台は、6   11円が佐賀、長崎、宮崎、鹿児島、612円が熊本、613円が山形、大分、61   4円が鳥取、島根そして617円が徳島となっています。    こうして、一番高い東京都の719円と一番低い青森県等4県の610円の差額で   ある109円の間に他の道府県があるのです。    ですから、地域間格差が極めて大きいことがわかりますね。    具体的には、東京を100とすると、青森等4県は84.8であって、一月に換算   するとおよそ2万円もの差となります。    しかも、この格差は、2005年(平成17年)度よりも拡大(東京100に対し   て沖縄等85.2でした)しているのです。 ■因みに京都府の最低賃金は?    2007年(平成18年)の京都府最低賃金(地域別最低賃金)は、それまでの時   間額682円が4円引き上げられて686円に改定され、同年10月1日から発行し   ました。    ですから、京都府内の使用者は、時間給686円よりも低い金額で労働者(パー   ト・アルバイトを含む)を働かせることはできません。  以上、最低賃金制度の概要をお話ししましたが、次回に、現在の最低賃金額はとても労 働者の生計費を考慮したものとはいえないこと、日本の「貧困」のひとつの原因になって いることをお話しします。                     弁護士 小 笠 原 伸 児  



<トップページへ>