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小笠原弁護士の”知っ得”



  

〜銀行の自己宛小切手

 みなさん、こんにちは  ようやく涼しい風が頬に触れる時季になってまいりましたが、お元気でお過ごしでしょ うか。  さて、前回は、最近になって私の経験をしました、銀行振出の自己宛小切手のついてお 話しすることにします。 ■ 金銭債務の弁済の提供   みなさんが、相手方から、金銭債務の弁済の提供を受けるとします。   例えば、相手方が、あなたに対して、金100万円を支払う義務があって、その義務  を履行してもらう際、相手方から現金として金100万円を提供されたら、あなたは何  の文句もなく受け取りますよね。   この場合の、相手方のあなたに対する「金100万円の支払義務」が、あなたに対す  る「金銭債務」であり、相手方のあなたに対する「現金100万円の提供」が、あなた  に対する「金銭債務の弁済の提供」です。  つまり、一般的には、金銭債務の弁済の提供は現金でなされるのが普通ですね。 ■ 多額の弁済の場合の小切手   ところが、金100万円なら持ち運びにもそれほど困りませんし、仮に紛失ないし盗  難したとしても、被害額として決定的でもありませんが、これがウン千万円となると、  事情は異なります。   例えば、相手方が、あなたに対して、仮に金8000万円を支払う義務があるという  ような高額な弁済の場合を考えてみて下さい。   相手方としては、現金として金8000万円を用意してあなたに提供するまでの間は、  提供する場所にもよりますが、とても不安でしょう。あなたとしても、相手方から受け  取った現金をすぐに銀行口座にでも振り込んでしまえばいいでしょうけれど、それまで  手元に持っていることは、やはり不安だろうと思います。   そこで、不動産取引等、高額な金銭の支払がなされる場合に、銀行振出の自己宛小切  手が利用されています。 ■ 銀行振出の自己宛小切手   これは、振出人と支払人とが同一銀行営業店の小切手で、自己宛小切手と言い、銀行  が振り出していますから、支払われることが確実な小切手で、現金と同じように扱われ  ています。   最高裁判所も、金銭債務の弁済のため、取引界において通常現金と同様に扱われてい  る銀行の自己宛振出小切手を提供したときは、特段の事情のないかぎり、債務の本旨に  従った弁済の提供があったものと認めるべきである、と判示(昭和37年9月21日第  二小法廷判決)しています。 ■ 私が経験した自己宛小切手は、この例のような金額なものではありませんでしたが、  それでも小切手の方が現金よりも安心できました。   また、最近、カラーコピーの銀行振出の自己宛小切手でしたが、ウン百億円の金額の  小切手を見せられたこともあり、私たちの日常の生活ではお目にかかれない世界を垣間  見ることができるのも、弁護士の仕事の醍醐味でしょうね。                     弁護士 小 笠 原 伸 児



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