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岡根弁護士のぼやき論壇

  

成年後見制度

 先日、学習会で成年後見を題材に話をさせていただいた。 この制度、理念としては、障害者の福祉政策の一環として、ノーマラ イゼーション(つまり、障害者の自己決定権を尊重し、障害者も健常者 も変わらず人として地域社会で自立して社会生活に参加できるようにと いう理念)を基本としている。そのような制度として、後見制度ができ てちょうど10年になる。  制度開始当初は、申し立てる方も、裁判所も慣れないこともあってか、 審判までに5〜6ヶ月かかることもまれではなかったが、ここ数年は6 割強が2ヶ月以内に審判がなされている。1ヶ月以内のケースが割合的 には最も高くなっている。それだけ定着してきたということだろう。  審判において必要とされる鑑定の費用も、最近では5〜10万円程度 が一般的となっている。それでも、本人に申立の時期までに主治医がい ないような場合は、鑑定を行ってくれる医者を捜すのが大変だと言われ る。  成年後見の制度は、あくまでも、本人の能力不足を補い、詐欺的商法 に引っかかる被害を食い止めるなど、本人の財産を保護するための制度 である(身上監護はおいておくとして)。  しかし、この理解が不十分なまま後見人に就任される人との間で深刻 なトラブルも発生している。  たとえば、一人暮らしの祖父(祖母でもかまわないがとりあえず祖父 で)の面倒をみるため、祖父の持つ土地の上に一緒に住める家を建てて 介護をしたいと思ったとしよう。  ところが、家を建てるときに、祖父の土地に担保をつけて後見人とな る息子名義の家を建てることはそのままではできない。特別代理人や家 庭裁判所の許可などが必要となるのであり、このケースを後見制度を利 用して解決しようというのは、本来はお門違いな話となる。  しかし、現実には、濫用されているケースが多いと言われている。  法定後見の場合、後見人には、包括的かつ全面的な代理権があり、事 実上何でもできてしまうことから、権限を誤って行使してしまうことに よる被害が生じる。推定相続人間に諍いがあるような場合において後見 制度が利用されている場合などによく見られるようである。  推定相続人間で争いが予想されるようなケースでは、できるだけ第三 者後見人、それも専門的な対処のできる弁護士などを選任した方が望ま しいこともあるであろう。  現在悩まれているのなら、最寄りの弁護士に一度気軽に相談してみて はどうでしょうか。                 弁護士  岡 根 竜 介



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