1. 人体の不思議展を最終的に閉幕させるに至った顛末(その1)

人体の不思議展を最終的に閉幕させるに至った顛末(その1)

  本年3月8日付け各新聞マスコミは、日本医師会(会長:原中勝征)は7日、人体を特殊処理した標本を有料展示する人体の不思議展について、遺体の扱いにおいて人の尊厳に反し、倫理的に認められないとする生命倫理懇談会(座長:高久史麿日本医学会会長)の見解を発表し、医師会として医師や医学生に人体展の営業にかかわらないよう求めることを訴えた、と報道しました。

  ほぼ時期を同じくして、人体の不思議展公式HP(www.jintai.co.jp)に、人体の不思議展は本年をもちまして閉幕とさせていただきます、人体の不思議展事務局はこれをもちまして解散いたします、との最終閉幕、解散宣言が掲載されました。

  一昨年11月頃から、京都展(2010年12月4日から2011年1月23日までみやこメッセにて実施)の開催を取り止めさせたい、それが無理でも京都展以降の開催は二度と行わせないと取り組んできた一人として、人体の不思議展を最終的に閉幕させるに至った顛末をご報告したいと思います。

  人体の不思議展(以下、人体展といいます)とは、人体組織に含まれる水分や脂質をシリコン樹脂などに置き換えるプラスティネーションという技術で作成された、人の全身及び一部器官などの標本(人体プラストミック標本と言います)を、有料で一般公開する展示催しです。
 
 前記HPによれば、2002年の開幕以降650万人が来場したとのことです。
 
 京都での人体展は、2005年4月2日から同年5月22日までの間京都府京都文化博物館で開催されたのが最初で、一昨年の前記京都展が2度目の開催でした。

  京都展の開催を知ることになった京都府保険医協会の関係者から、京都展の開催を中止にさせたいとの相談を受けたことが、私が人体展に関わるようになったきっかけでした。

  最初は、表現の自由との関係で、人体展を開催させないということが妥当なのか、疑問を抱きました。

 しかし、その後、人体展は駄目だと考えるようになりました。

 では、どうして人体展の開催が駄目だと考えるようになったのか。

 それは、展示される人体プラストミック標本が実は死亡した人の身体であると実感したからでした。

 そして、その死体の由来にも疑問がもたれていることがわかったからでした。

               2012年3月19日  弁護士 小笠原伸児