最近、ご高齢の方のご親族から、「一人暮らしの母親が認知症になったようで、高額の健康食品などをたくさん購入していることがわかった。どうしたらよいか,悩んでいる」といった御相談をよくお聞きします。こういうときに活用できるのが成年後見制度です。
成年後見制度とは、精神上の障害により判断能力の不十分な方々(認知症の方、知的障害のある方、精神障害のある方など)について、①契約の締結等を代わりに行う代理人などの援助者を選任したり、②援助者による事前の同意なしに契約等ができないようにしたり、③勝手に契約等をした場合にはそれを取り消すことができるようにする等により、本人を保護し支援する制度です。
成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度があります。
任意後見制度とは、現在、判断能力がある方が対象で、将来判断能力が不十分になったときに備えて、あらかじめご本人と任意後見人が契約(任意後見契約)を締結しておき、将来判断能力が失われたときに任意後見人が本人を保護する制度です。
法定後見制度とは、現に判断能力が失われたか低下している方が対象で、親族などの申立により、家庭裁判所が本人の援助者を選任し、その援助者に代理権や契約の取消権等を与えることにより本人を保護する制度です。法定後見制度には、ご本人の判断能力のレベルにより、①後見(判断能力が全くない場合)、②保佐(判断能力が著しく不十分な場合)、③補助(判断能力が不十分な場合)の3種類があります。
成年後見(法定後見)の申し立ては、本人・配偶者と4親等内の親族が行うことができます。身寄りのない方については、市区町村長が申し立てを行うこともできます。 申し立てには、①申立書、②手数料800円、③登記印紙2600円、④切手(額は各地の裁判所で違うが、おおむね3000~5000円程度)、⑤申立人の戸籍謄本(本人以外が申し立てるとき)、⑥本人の戸籍謄本と戸籍の附票、住民票、⑦診断書、⑧登記事項証明書(東京法務局が発行する書類で、本人がすでに後見開始の審判等を受けているか否かに関する証明書)⑨成年後見人候補者がいる場合は、候補者の戸籍謄本、住民票、身分証明書(本籍地の役所が発行する破産宣告を受けていない旨の証明書)、登記事項証明書などです。申立書は定型のものを家庭裁判所で配布しています。
申し立てにかかる費用は、自分で申し立てる場合は、手数料800円と登記印紙代2600円、切手代3000~5000円などと、後見・補佐の場合は医師の鑑定料がかかります。鑑定料は,5万円以下が全体の約68.9%、5万円超~10万円以下が29.7%で、全体の約98.6%の事件で10万円以下となっています(「成年後見関係事件の概況-平成24年1月~12月-」最高裁判所事務総局家庭局)。補助の場合は鑑定は不要なので、もっと安くすみます。また法定後見申立を弁護士に委任した場合の弁護士費用は、各事務所によって異なりますが、おおむね10~20万円位です。
申し立てをしてから、審判までの期間は、2か月以内が約80.5%、3か月以内が90.8%と、約9割が3か月以内に終わっています(上記「概況」より)。申し立ての後は、家庭裁判所が申立人や関係者に対し聴き取り調査や、本人の面接、医師による鑑定などを行います。
法定後見申立事件(後見・補佐・補助)のうち、申立が認められて成年後見人(後見人・補佐人・補助人)が選任された割合は、H24年度の場合、約91.9%で(上記「概況」より)、おおむね9割で申立が認められています。
高齢者の財産を保全するための制度(サービス)としては、法定後見制度や任意後見制度以外にも、①弁護士と任意の財産管理契約を締結する方法、②金融機関と信託契約を締結して金融機関に管理してもらう方法、③銀行の貸金庫を利用する方法、④社会福祉協議会の地域福祉権利擁護事業等もあります。
詳細は弁護士に御相談下さい。