2022年6月7日、建設アスベスト被害について、全国一斉メーカー訴訟を提訴した。京都でも、建設現場で石綿含有建材の切断や加工等の作業に従事する中で石綿粉じんを吸い込み、肺がんや中皮腫等に罹患した被害者とその遺族12人が建材メーカー14社を被告として、総額2億5740万円の損害賠償を求める3陣訴訟を、京都地裁に提訴した。
京都3陣の被告企業をあえて明記する。
A&Aマテリアル★
クボタ
ケイミュー★
神島化学★
日鉄ケミカル&マテリアル★
大建★
太平洋セメント★
東レACE
ニチアス★
日東紡績★
バルカー★
ノザワ★
エムエムケイ★
パナソニック
(★は最高裁判決で責任が確定した11社)
今回の提訴では国は被告にせずメーカーだけを訴えている。以下、その理由と被告メーカーを名指しする理由を述べる。
昨年5月の最高裁判決で国と建材メーカーの責任が確定した。
それを受けて、国は菅首相が総理官邸で原告と面談して直に謝罪し、給付金制度を創設した。
しかし建材メーカーは、今も全国各地の裁判で争い続け、うちの建材は他社よりましなどと責任のなすりつけあいのような主張を行なっている。
また被害者はみな石綿建材が原因として国が労災を認定しているのに、労災認定が間違いだと無理筋の主張も行なっている。
率直に言わせてもらう。往生際が悪すぎる。
アスベストが危険なことは戦前から分かっていた。海外ではもっと早くに禁止された。なのにメーカーは安全キャンペーンを張って2006年まで製造販売を続けた。その結果、たくさんの建築職人の命が奪われた。
最高裁で責任が認められた企業の社長は被害者や遺族に、定型電報みたいな手紙を送りつけただけで、直接の謝罪は未だにない。原告たちが「お宅の社長は首相よりも偉いのか!」そう言っても態度は変わらない。原告たちが話し合いを求めて訪問しても門前払いのところもある。
私は弁護士として辛い刑事事件も担当し、ファミレスで被害者に土下座して詫びたこともある。そういう経験も踏まえて言うが、多数のかけがえのない命が奪われた事件で、はっきり言ってあり得ない態度だ。人の道に外れてると言う他ない。
原告たちは建材メーカーにとってお客様ではないか! 客に対してその態度は何だ! 私のようなやさぐれ弁護士はついそういう荒い思いにかられるのだが、そこまでの態度を取られても、建築職人は被告企業の製品をボイコットしているわけではない。彼らは若い職人が不安なく働ける建設現場を実現したいのだと言う。被告メーカーと比べて何と良識ある態度なんだろう。社長さん、アンタの家も彼らがいなければ建たなかったんだよ。
建設分野でのアスベスト被害は解決済みの問題ではない。国交省の推計では石綿建物の解体ピークは2028年とされている。石綿関連疾患が40〜50年という長期間の潜伏期間を経て発病することを考えると、今後も被害が拡大することは必至だ。
しかも被害はかつてなく甚大だ。今も毎年2000人以上が中皮腫で死亡しており、建設アスベスト被害は史上最大の産業公害と言われている。
建材企業の役員、代理人弁護士の方々に言いたい。もうええ加減アホな争いは止めて、直ちにきちんと謝罪して全面解決に足を踏み出すべきだ。それが社会的責任を負う企業としてのあるべき態度だと思う。