1. 関西建設アスベスト京都1陣訴訟・大阪高裁で全面勝訴!
アスベスト訴訟
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◆事件の概要
 2018年8月31日、大阪高等裁判所第4民事部(田川直之裁判長)は、関西建設アスベスト京都1陣訴訟において、国及び建材企業の責任を認め、国に対して総額1億8885万円余り、建材企業10社に対して総額1億1319万円余りの支払いを命じる1審原告全面勝訴判決を言い渡しました。
    この事件は、建築現場において建材から生じたアスベスト粉じんにばく露し、肺がん・中皮腫等の重篤な病に罹患した建築作業従事者とその遺族が、アスベスト建材の製造販売企業と規制を怠って流通を促進した国に賠償を求めた訴訟です。被害者25名のうち、既に16名が死亡(提訴後死亡者11名)という現実が物語るように、その被害は極めて深刻です。
    本判決は、一人親方の救済と企業責任を両方認めた全国初の判決で、画期的な勝訴判決です。特筆すべきは、京都地裁の1審判決で唯一敗訴した1審原告についても請求を認容し、文字通り全員勝訴判決となったことです。1審判決のときは勝訴判決に沸き立つ中で、一人うな垂れる遺族原告がおられたことが痛恨の思いでしたが、今回は本当にうれしかったです。
◆国の責任
    本判決は、国の責任について、1審判決に引き続き、以下の責任を認めました。
  【吹付作業との関係】
    1972年10月1日~1975年9月3日まで、①送気マスク着用義務付け、②警告表示義務付けを怠った責任
  【屋内作業との関係】
    1974年1月1日~2004年9月30日まで(マスクは平成7年まで)、①防じんマスク着用及び集じん機付き電動工具使用義務付け、②警告表示義務付けを怠った責任
  【屋外作業との関係】
    2002年1月1日~2004年9月30日まで、①集じん機付き電動工具使用義務付け、②警告表示の義務づけ等を怠ったことの責任
    特に、本判決は”一人親方”と呼ばれる個人・零細事業主に対する関係で、国が警告表示義務付けを怠った責任を認めました。建設業界ではコスト削減等のために多くの建設労働者が早々に独立して(させられて)、一人親方として就労するケースが多いのですが、従来の判決では、労働安全衛生法は労働者を保護するもので一人親方は保護の対象外だとして救済が認められませんでした。しかし労働者と同じように等しく罹患した彼らが保護されないというのは著しい不条理で、これを認めさせたことには大きな意義があります。
◆企業の責任
    本判決は、企業責任についても1審判決を踏襲して、吹付工との関係では1972年10月1日から、屋内作業者との関係では1974年1月1日から、屋外作業者との関係では2002年1月1日から、各建材の販売終了時まで、石綿含有の有無や危険性等について警告表示を行わずに製造販売した責任を認めました。
    京都地裁の1審判決は全国で初めて企業責任を認めた画期的な判決でしたが、高裁がそれを維持しさらに企業に対する責任追及の門戸を拡げるのかも大きな争点でした。特に、今年3月の東京1陣訴訟東京高裁判決が企業責任を否定していただけに、その流れを断ち切ることができるかが問われていました。
    この点、本判決は、建材企業が警告表示をせずにアスベスト含有建材を製造販売した共同不法行為責任を認め、1審判決の9社から10社に責任を負うべき企業の範囲を拡げました。
    そもそも多数の現場を渡り歩き、不特定多数の建材から長期にわたって石綿粉じんに曝露し続ける建設作業従事者にとっては、どの企業のどの建材からアスベスト粉じんを吸引したのかの特定が極めて困難です。被告企業らは共同不法行為成立の要件として個々の建材の到達が必要と主張しましたが、本判決は、事案の特性を踏まえて、到達は不要で「到達の相当程度以上の可能性」があれば足りると明確化し、被害者救済の道を拡げました。
◆ 全国でのたたかいと今後の課題
  建設アスベスト訴訟は、2008年5月16日に首都圏訴訟が東京地裁に提訴されて以降、札幌、横浜、京都、大阪、福岡の6地裁で裁判がたたかわれてきました。京都では、2011年6月3日に1陣訴訟を提訴、2017年1月24日に2陣訴訟を提訴してたたかってきました。
    本判決の約3週間後、9月20日には、大阪1陣訴訟の大阪高裁判決が言い渡され、そこでも一人親方の救済も含めて国の責任が認められるとともに、企業責任も認められる全面勝訴判決が言い渡されました。しかも同判決は、高裁レベルで初めて国がアスベスト含有建材の製造禁止を怠った責任も認めるとともに、国の住宅政策に起因して被害が拡大したとして、国の責任割合をこれまでの3分の1から2分の1に引き上げました。
    このように、京都・大阪の高裁W判決は、一人親方救済と企業責任がもはや高裁レベルでも揺るぎない司法判断の流れとなったことを決定づけるとともに、違法事由や責任期間、責任割合などで、被害救済を大きく拡げるものとなりました。特に国は、これで10連敗です。これ以上、徒に裁判を続けて解決を引き延ばすのではなく、「命あるうちの解決」という原告たちの願いに応えて、早期に全面解決を図ることが必要です。アスベスト使用の建物の解体のピークは2030年代で、今後数十万人の被害者が出ると推定されています。史上最大の産業被害と言われる建設アスベスト被害の早期解決のために、私たちは被害救済のための基金制度の創設を国と企業に呼びかけています。これはもはや待ったなしの課題です。
 残念ながら国と企業が上告したため、私たちも上告しましたが、今後、裁判に全力で取り組みながら、アスベスト被害者の完全救済と被害根絶を求める法廷外の運動でも奮闘していきたいと思います。