(女性弁護士の法律コラム NO.164)
ある人が亡くなり、遺言は、相続人の一人である私の依頼者には一切遺贈なしという内容でした。
そのため、他の相続人に対し遺留分減殺請求(民法1031条)を行ったのは言うまでもありません。
次に、心当たりの金融機関に、亡くなった人の口座があったかどうか調べ、口座が存在した金融機関から死亡時の残高証明を取りました。
ただ、一般論で言うと、他の相続人が生前に出金している場合もあったりするので、入出金の状況がわかる取引履歴を入手したいと考え、3月6日、その金融機関に申請の文書を送りました。
ところがです。
3月14日、その金融機関の担当者が「共同相続人全員の同意がないと出せません」「あるいは弁護士会照会という手続きを取ってください」と電話をかけてきました。
「最高裁の判例で、相続人が単独でもできるとなっているじゃないですか」と言っても、「本店の法務部の指示なので」という返事。
京都でも有数の金融機関なのに、なんで最高裁判決に従わないの!!と私は内心怒りまくりました。
すぐに支店長と担当者宛てに、最高裁判例が存在すること、もしあくまでそれに反する取り扱いをするなら損害賠償訴訟を起こすと書いてFAXしました。
次に、担当者から来た返事は「決して協力しないわけではない」「『お願い』です」というものでした。
それで、再度「『お願い』には応じられない」ことと最高裁判例も添付してFAXを入れました。3月18日のことです。
すると3月20日、開示すべき理由を明らかにすれば応じるとの回答が返ってきました。
そして、本日、やっと取引履歴が私の手元に届きました。
最高裁判決が存在しても、それに従わない金融機関があることに驚きました。
弁護士会照会で手続きするのは、簡単ですが、費用も時間もかかります。
また、せっかく、どこかの弁護士が最高裁まで争って最高裁判決を勝ち取ってくれたのに、私たちが安易に最高裁判決に反する金融機関の扱いに応じるのは、法律家としてあるべき姿ではないと思いました。
本当に、カリカリ頭に来た約20日間でした。
2014年3月アーカイブ
3月11日から京都文化博物館で始まった「光の賛歌 印象派展」に、大学時代の友人と二人で行って来た。
雨が激しく降っていたので、すいているかなあと思っていたが、たくさんの中高年女性で大混雑。
いつものことながら、「印象派」への関心は高い。
同じく中高年の私たちも、自然にその群衆の中にとけ込んでいた。
作品は、ボストン美術館やオルセー美術館など、世界の有名美術館から印象派の名画が集められ、展示点数も73点と想像以上に多かった。
印象派の画家たちが活躍した19世紀後半は、水辺が生活に潤いをもたらす余暇を過ごす場所としてクローズアップされていた時代でもあったことから、セーヌ川などの「水辺」を中心とした「光の中の風景」画が多かった。
空、水、光が柔らかい筆致で描かれ、見応えがあった。
文化博物館に大学時代の同級生が働いていると聞いていたので、見終わった後、図々しく立ち寄り、旧交を深めるというオマケもあった。
「印象派展」は、5月11日まで。
(女性弁護士の法律コラム NO.163)
昨日の日曜、ランニングしがてら、元依頼者の方の自宅に初めて寄ってみた。
事件の依頼を受けていた時、一人暮らしで身体も弱く、しかもわずかな年金以外には定まった収入がないことを知ったので、私はしきりに生活保護の受給を勧めた。
しかし、「絶対に生活保護は受けたくない」、「受けるくらいなら車の中で寝泊まりしてもいい」などと言って強く拒んでいた。
生保は受けたくないという気持ちは固かったが、病弱で、年齢も60代後半になっていたので、どうしても放っておけなかった。
そこで生活相談をしておられる元市会議員の方の所へ同行し、生活保護とはどういうものなのかなどを説明してもらい、住まいも探してもらうよう頼んだ。
その後、生活保護を受けることにしたと連絡があり、ホッとした。
昨日、半年以上ぶりに会ったが、しみじみと「生活保護を受けて良かった」と言ってくれた。
また、生保を受けていることで嫌な思いもすることもあると率直に語ってくれた。
生保の悪用事例が新聞に載ったりするが、その元依頼者の方のように「税金で生活させてもらってるんだから」と何度も語る真面目な人もいることを知ってほしいと思う。
つつましく生活されているようで、自宅もとても整理整頓され、私の部屋などと比べると、ずっと綺麗に使っておられた。
これからも、時々、立ち寄りたいと思う。
めったに読むことがないが、本当に久しぶりに雑誌「女性自身」を買った。
「女性自身」3月25日号に、上記の対談が掲載されており、読んでみたいと思ったからだ。
進行役は、湯浅誠さん。豪華メンバーだ。
瀬戸内さんの講演は、これまで何回か聴いたことがある。
91歳という年齢にもかかわらず、原発反対や平和問題などで全国を飛び回っておられる。
瀬戸内さんからすれば、私など子どものようなもの。
だから瀬戸内さんが頑張っておられるのを見聞きすると、「もう年だから」なんて言っていられない。
対談では、「原発事故のために、まだ福島の故郷に帰れない人たちが13万人もいるというのに、どうやって放射能や汚染水をコントロールしているのか、安倍首相に聞いてみたいですね。」
「憲法改正の動きとか、特定秘密保護法の制定とか、いまの日本の雰囲気は太平洋戦争直前そっくりです」
などと強烈な批判をされていた。
吉永小百合さんは、以前から原爆の詩を朗読する活動をされているが、最近は、原発被災者の詩を朗読したりもされている。
女優だから色々しがらみもあるだろうが、さすが大女優となると違うなあと思う。
吉永さんも「原子力の平和利用なんてない、核というものは共存できないものなんだということを、事故で初めて自覚したように思います」と堂々と述べている。
こうやって、少しでも多くの人が声をあげていくことが大切。
そして、女性雑誌も、芸能人のゴシップ記事ばかりでなく、このような企画ももっと掲載してほしいと思う。
「マチベンの日々」でも何度か書いたが、テレビで蒼山日菜さんの切り絵を知ってから、なんとなく切り絵の魅力に取りつかれている私。
そしてまた、新しい切り絵作家を知った。
3月15日朝のTV朝日の番組「LIFE~夢のカタチ」で放映されたSouMaさん。
蒼山さんの切り絵は、まるでレースのように繊細で美しい。
SouMaさんの切り絵は、繊細な上に、それが立体的となって完成するところにすごさがある。
うまく説明できないが、完成形は立体的だが、そのすべてがどこかで1枚の紙としてとしてつながっているというから驚きである。
人間の技(わざ)というのは、ここまでできるかのかととても感動した。
SouMaさんの作品は、彼女のホームページでも見ることができるが、その作品の立体的な美しさや見事さは、インターネット上では十分伝わってこない気がする。
SouMaさんは、島根県松江市在住ではあるが、大阪には彼女の作品が常設されている店もあるとのことなので、是非、本物の作品を見てみたいと思う。
(女性弁護士の法律コラム NO.162)
NHKの籾井会長が、NHKの理事10人全員から辞表を取り付けていたことが発覚し、世間を驚かせた。
籾井会長は、国会で「一般社会ではよくあること」と答弁したが、こんなこと、一般社会でよくあるはずがない。
「一般社会でよくあること」ではないが、しかし、全くないわけではない。
ずいぶん前に関わった、ある事件のことを思い出した。
京都のある企業で働いていた労働者。
不当解雇ということで解雇無効の裁判を起こすと、会社側から、その労働者の自筆の退職届が提出され、会社の言い分は「解雇じゃない、自分で退職したんだ」とのこと。
実は、その企業は、労働者を雇用する時、全員から日付欄を空白とした退職届を取っていたことが判明した。
経営者が労働者を解雇するには「正当な理由」が必要だ。
だから、解雇しても、正当な理由があるか否か、争いとなる可能性がある。
それを避けるために、経営者は、あらかじめ日付欄空白の退職届を取っておき、労働者を解雇したいと思った時、その日付欄を勝手に記入し、労働者が自分の意志で退職した扱いにできるようにしていたのだ。
もちろん、そんな退職届は無効に決まっている。
出すこと自体、拒否すれば良いが、雇用される時、労働者がそんなこと言う力関係にない。
出してしまうと、その会社では労働者からあらかじめ退職届を出させているという慣行があるなどと同僚が証言してくれないと、証明は難しくなる。
籾井会長の言う「一般社会」ってどんな所だろう。
どこにしても、そんな所はブラックだよね。