1. 2024年7月

2024年7月アーカイブ

(離婚)離婚とペット

最近では、ペットを飼っている家庭も少なくありません。そんな家庭の夫婦が離婚する場合、ペットについてはどのように考えればよいでしょうか。

 

まず、そのペットがどんなに家族同様に過ごしていたとしても、法律上はあくまで「物」として扱われます。

夫婦のどちらかが独身時代から飼っていた場合には、原則として、独身時代から飼っていた方が引き取ることになります。

結婚後に飼うようになった場合には、財産分与の対象となりますが、離婚時にどちらが引き取るかなど条件が話合いで決まらない場合、裁判所が一切の事情を考慮して決めることになります。

 

離婚時にペットについて紛争になることはあまり多くはありませんが、下記のような裁判例(福岡家裁久留米支部令和2年9月24日判決)がありますので、参考にしてください。

 

夫婦は3頭の犬を飼っていました。夫が自宅を出て別居状態となり、その後は犬は妻(無職)が飼育し、夫は餌代を払っていました。

 

判決は、犬3頭が財産分与の対象となるとし、犬は妻が飼育することを前提として、双方の共有と定め、民法235条1項により持分に応じて飼育費用を負担するのが相当と判断しました。

犬を共有として、飼育されている環境の家賃の一部や餌代の一部の支払いを命じました。

 

 

 

 

 

 

「ご苦労さま」という言葉

土曜の朝日新聞の別刷りbeの中に、国語辞典編纂者の飯間浩明さんの「街の級言葉図鑑」というコラムが毎週掲載されている。毎週1つの言葉を取り上げ、「へぇ~」と思うような解説が書かれてあるので面白い。

2024年7月27日号は、「ご苦労さま」という言葉だった。

 

そこには、「ご苦労さま」という言葉は、若い会社員などは使わなくなっているようで、マナーなどの講習会などで「ご苦労さま」は目下に使うものなので、「お疲れさま」と言いましょうと教わるからと書かれてあった。

実は、私も、ずっと以前に、同様のことをどこかで読み、それ以降、「ご苦労さま」という言葉は意識してあまり使わないようにしていた。

 

しかし、このコラムには「歴史的には、そんなことはありませんでした」とはっきり書かれてある。

「ご苦労さま」は目下にも目上にも普通に使うことばで、江戸時代にはむしろ目上に多く使われていたとか。

 

目下への言い方と教える講師が増えたのは、21世紀に入ってからなんだとか。

なぜそうなったんだろう?その理由を知りたい。

 

ことばって難しいね。

 

 

 

 

 

最近、カスタマーハラスメント(カスハラ)による被害が深刻化しているとの報道をよく目にしますが、客から著しい迷惑行為を受けたカスハラなどで精神疾患を発症した男性社員(当時24歳)が2020年8月に自殺した事案で、千葉県柏労働基準監督署は、2023年10月、労災と認定しました(2024年7月23日付け読売新聞朝刊)。

 

この男性は、埼玉県の住宅メーカーに勤務し、注文住宅販売の営業を担当して千葉県内の住宅展示場で働いていました。

男性は、2020年2月、住宅新築中の客に追加費用が必要になったと説明したことをきっかけに、この客から叱責を受けるようになりました。8月には現場監督と一緒に顧客宅を訪問し、謝罪もしていました。

 

労基署は、精神障害の労災認定基準にある「顧客らから対応が困難な注文や要求を受けた」「顧客らから著しい迷惑行為を受けた」にあたると指摘し、強い心理的負荷がかかり、精神疾患を発症したと判断しました。

 

「著しい迷惑行為」(カスタマーハラスメント)については、厚生労働省が2023年9月、カスハラの類型に位置づけ、労災の新たな認定基準に加えています。

 

担当した弁護士は、今回は、男性の携帯電話に残されていた通話の音声記録があって、認定の決め手の1つとなったとのことです。やはり証拠を収集しておくことが重要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

22年ぶり5度目の礼文島の旅

6月末から7月初めの4日間、22年ぶり5度目の礼文島の旅に行って来た。

 

礼文島は、日本最北端の島。別名「花の浮島」とも呼ばれ、北アルプスなど高山にしか咲かない高山植物をハイキング気分で見ることができる。

若い頃は、すっかり礼文にはまり、わずか数年間のうちに4回も訪れたが、2002年以降、訪れていなかった。礼文に行ったことがなかった夫が「行ってみたい」と言って計画表を作成してくれていたが、残念ながら行く前に亡くなってしまった。そんな礼文に、山仲間から誘いがあったので、久しぶりに行ってみることにした。

 

とにかく礼文島は遠い。4日間の行程のうち、1日目と4日目はほぼほぼ移動のみ。また、私はやはり雨女なんだろうか。今年は、7月1日まで礼文島の天候はとても不安定だった。快晴は帰る日の4日目だけだったが、それでも、その前2日間も雨がずっと降り続くというようなことはなかったので、なんとか久々の礼文を満喫することができた。

 

2日目、まず礼文林道を歩き、レブンウスユキソウを見に行く。

 

 

2日目、桃岩展望台コース(桃岩から島の南端の知床まで)を歩く。強風ではあるが、たくさんの高山植物が咲く中を歩く。

 

 

後方に見えるのが「桃岩」。角度によっては、本当に「桃」のように見える。

 

 

 

知床まで到着すると、次は、22年前にはなかった新たな観光地「北のカナリアパーク」へ。

これは吉永小百合主演の映画「北のカナリアたち」(2012年)のロケで使用された麗瑞小学校岬分校のセットが残され、そこが観光地となっている。

 

 

3日目は、気圧の谷が通過し、昼頃は雨風が強かった。

 

帰る日の4日目。晴れ予報だったので、宿泊したホテルの「早朝の桃岩展望台」へ行く企画に参加。天気が良いと、景色も素晴らしい。最高!

 

 

 

利尻山もくっきりと見える。

 

22年ぶりに訪れた礼文島。22年前と同じように、たくさんの花々が迎えてくれて、やはり礼文島は何度来ても好きな場所だ。

だた、心残りは、悪天候が続きウニ漁ができなかったとのことで、お目当てのウニ丼を食べることができなかったこと・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝ドラ「虎に翼」で、型破りの強烈な個性で目を引くのは、俳優滝藤賢一さん演じる「多岐川幸四郎」裁判官。寅子の上司である。

この多岐川のモデルは、宇田川潤四郎裁判官(1907~1970)。

新憲法の下で最高裁の初代家庭局長になり、日本になかった家庭裁判所を創設した。

多岐川がドラマに初登場した時に滝での願掛けの場面があったが、宇田川さんが滝行をしていたのは実話らしい。

 

宇田川さんは、家庭裁判所の設立や子どもたちの支援、女性の地位向上に全力をかけ、「家庭裁判所の父」とも呼ばれている。

女性の地位が低いままでは安心できる健全な家庭は成り立たない、子どもと家庭の問題は地続きと考えていた。

1969年の朝日新聞のインタビューでも「女性の人格は無視され、男性の暴力のもとに泣いている女性が多い」「国民のすべてが暴力支配を徹底的に排除し、『法の支配』の実現を強調することは大きな義務である」と答えた。

 

宇田川さんは、京都にもなじみが深い。

京都少年審判所長をつとめ、宇治少年院の設立に尽力し(2008年閉鎖)、京都家庭裁判所の所長に就任したこともあった。

 

宇田川さんが亡くなって約55年の歳月が経過しようとしている現在においても、彼が求め描いた家庭裁判所の役割は微塵も変わっていない。

高齢化に伴う成年後見事件の増加、今年5月に民法改正で成立した共同親権に関する紛争の増加が見込まれるなど、今後ますます家裁が関わる事件が増え続けることは明らかである。

しかし、その家庭裁判所の裁判官・調査官・書記官などの人員体制は、国民のニーズにとうてい見合っていないのである。

 

改正民法は、2年以内には施行される。

それまでに、家裁の真の目的が達せられるよう、家裁の体制の充実を求める声をより広範囲にあげていかなければならない。

2022年12月9日付け当ブログで御紹介した同年11月2日付け東京高裁判決。労災認定につき、事業主が不服申立をすることができるという酷い判決でした。

 

最高裁がどんな判断を下すか心配していましたが、2024年7月4日、事業主は不服申立てはできないという判決が下りました。

 

ホッとしました。

事業主の不服申立の権利が認められれば、一度、労災認定が下されても、確定までに時間がかかる上、後から取り消されるおそれもあって、労働者の早期救済という労災制度の趣旨が不安定になるおそれがありました。

 

最高裁は、労災保険には労働者の早期救済という目的があり、事業主の不服申立てを認めれば、この趣旨が損なわれると指摘しました。

 

国は、上記高裁判決後、労災認定があると保険料増額という不利益を受ける事業主側にも配慮し、2023年1月から、保険料の適否を争う手続の中で、労災認定への不服も主張できるように運用を変更しました。この対応については、最高裁は追認しました。事業主の不服申立てが認められれば保険料引き上げは取り消されますが、労災認定まではさかのぼらず、労働者が給付金を返金する必要はありません。

 

 

 

2024年7月3日放映の「虎に翼」では、昭和25年、刑法200条の尊属殺人罪について、最高裁が合憲判断を下したという場面がありました。

 

六法を読むと、刑法200条の尊属殺人罪の規定は、現在は「削除」されています。

 

刑法200条は、自己または配偶者の直系尊属を殺した者について、通常の殺人罪とは別に、尊属殺人罪を規定し、それが適用されると、法定刑は死刑または無期懲役に限られ、執行猶予は付けられませんでした。尊属殺人の規定は道徳の乱れの歯止めとして機能しているというわけです。なお、この多数意見に対し、朝ドラの「穂高教授」のモデルである「穂積重遠」裁判官は反対意見を書いています。

 

これは明らかに憲法14条が定める「法の下の平等」に反するとして争われたのでした。

 

そして、合憲判決が出てから23年が経った昭和48年4月4日、最高裁大法廷は、日本で初めて違憲審査権を発動し、刑法200条は違憲であるとの判断を下しました。

 

この殺人事件は、昭和43年10月、栃木県宇都宮市で起きました。長年にわたって近親相姦を強いられ子どもまで出産させられていた娘が実の父親を殺した事件でした。娘は「殺そうと思ってやった」と。

 

昭和44年5月29日の第一審判決は、尊属殺人罪について憲法違反であるとしましたが、同46年5月12日の控訴審判決は、一転、合憲であるとし、実刑判決を下しました。

 

しかし最高裁は、この事件を小法廷から大法廷に回し、とうとう違憲判決が下されました。被告人は懲役2年6月・執行猶予3年の刑となりました。

 

そこには、法律の内容がおかしい、不合理だと感じて闘った弁護士がいました。そして、それを正面から受け止めた裁判官がいました。

 

ちなみに、昨日(2024年7月3日)、最高裁大法廷は、旧優生保護法の下で不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、障害者らが国に損害賠償を求めた事件で、旧法を「立法時点で違憲だった」とし、憲法13条・14条に違反すると判断しました。

 

喜びにわく弁護団の中にも、また最高裁大法廷の判事の中にも、知り合いの顔がありました。こうやって歴史は、今も1歩1歩変わっていくと感じました。

 

 

 

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