1. 2025年2月

2025年2月アーカイブ

民法には「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する」という規定があります(民法772条2項)。これまでは、離婚後300日以内に生まれた子がたとえ別の男性の子の場合でも、「嫡出否認」の手続が取られない限り前夫の子とされてしまいました。

従って、別の男性の子を出産した母親が出生届を出さずに子が無戸籍になるという問題がありました。

 

そこで、民法が改正され(2024年4月1日施行)、民法772条2項の規定は維持されつつ、離婚後300日以内でも女性が再婚した後に生まれた子は新しい夫の子と推定するという例外規定が新設されました。

また、「嫡出否認」についても、これまでは否認できるのは「夫」だけに限られていましたが、母や子にも拡大されました(民法774・775条)。

そして法改正があった場合、改正法の内容は施行日以前には遡らないのが通常ですが、国は、施行前に生まれた子についても2025年3月末までに限って、母子側が嫡出否認の申立ができる救済制度を設けました。

 

しかし、2025年2月26日付け毎日新聞によると、救済制度が無戸籍問題の解消にはつながると期待されていたにもかかわらず、無戸籍の解消が進んでいない現実があることがわかりました。

 

その理由としては、母や子が嫡出否認手続をしようとすると、前夫を相手に家裁に調停を申し立てなければならず、前夫と関わりたくなかったり、子の存在を知られたく無かったりする場合には利用することが困難となります。

 

無戸籍児の解消の問題は重要です。

2025年4月以降も無戸籍児が存在しているような場合には、抜本的に解消の方策を再検討する必要があるのではないでしょうか。

 

 

 

 

人に優しい社会に~障害者差別解消法改正~

居酒屋やファミレスでタッチパネルやスマホによる注文方式のため困惑した、使えなかった、という経験はありませんか?

人手不足や経営合理化のため、ICT(情報通信技術)化や無人化が進んでいます。

私などデジタル機器の扱いが苦手というだけで使いこなせていないのに、まして障害を持った方々はどうでしょうか。

 

障害者のこのような問題について、2025年2月17日付け毎日新聞が朝刊の1・2面で大きく取り上げていました。

 

毎日新聞が行ったアンケートによると、例えば、視覚障害者は小売店の会計や飲食店の注文などで「タッチパネルが使えない」という回答が多かったそうです。その場で困ってもスタッフが少なく「手伝いを頼めない」。中には、店から「操作できないなら帰ってほしい」と言われたケースも。聴覚障害者は「無人駅の改札や券売機でインターホンから問い合わせができない」。車椅子の人についてはタッチパネルが届かない、などなど。

障害の種別を問わず、困難に直面している状況があります。

 

2024年4月1日から改正障害者差別解消法が施行されました。「不当な差別的扱い」はもともと禁じられていますが、今回の改正で、事業者による障害のある人への「合理的配慮」の提供が、これまでの努力義務から義務化されました。

「合理的配慮」とは、

①行政機関等と事業者が

②その事務・事業を行うにあたり、

③個々の場面で、障害者から「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意見表明があった場合に

④その実施に伴う負担が過重でないときに

⑤社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずること

とされています。

 

具体的な対応は、個々の場面で異なるため、障害のある人と事業者等の間の「建設的対話」を通じて相互理解を深め、共に対応案を検討していくことが重要とされています。

 

年齢を重ねれば、誰しも障害を持つようになっていきます。

障害者に優しい社会というのは、人に優しい社会と言えるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

「ウサギの島」大久野島と毒ガス

先日(2025年2月11日付け)の新聞で、「ウサギの島」として知られる広島県竹原市の大久野島で、ウサギを蹴って死なせたり口にはさみを入れたりしたとして、25歳の男性会社員が動物愛護法違反で再逮捕されたという記事を目にした。なんとも痛ましい事件だ。

 

私は、2024年3月、愛媛の友人らと初めて大久野島を訪れたこともあり、この記事が特に目にとまった。

大久野島は、しまなみ海道からは少しはずれるが、しまなみ海道に近い広島県の島の1つである。周囲約4キロの小さな島である。

約500匹以上が生息するという「ウサギの島」として大久野島は有名で、1度訪れてみたかった。

フェリーで島に到着すると、もう、そこここにウサギがたくさんおり、観光客になれているせいかあまり逃げることもなく、触れたりもできる。

 

 

ところで、恥ずかしながら、大久野島を訪れて初めて知ったのが、実は、大久野島が毒ガス製造の島だったということ。そんな「負の歴史」があった。

昭和2年、島全体が陸軍の毒ガス製造を目的として管理下となった。昭和4年には毒ガス製造が始まり、昭和20年まで続けられていたという。日本軍が毒ガスを製造していたことは、昭和59(1984)年まで日本ではほとんど知られていなかった。大久野島は、機密保持のため、地図からも存在を抹消されていた時期もあった。

 

大久野島には毒ガス資料館もあり、毒ガスの悲惨さや毒ガス製造過程で多くの犠牲者を出すに至ったという歴史などを知ることができる。

是非、行ってみてほしい。

 

では、大久野島になぜ野生のウサギが生息しているのか?

毒ガス製造実験でウサギが用いられていたようだが、それらは戦後全羽殺処分されたようである。

今生息するウサギは、観光目的で導入されたらしい。

 

 

 

 

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