(女性弁護士の法律コラム NO.135)
Mさん(女性)が私の法律相談に初めて訪れたのが1989年。
Mさんは難病を抱えていたが、まもなく自宅を出て京都地裁近くにアパートを借りて一人暮らしを始めた。当時55歳。車椅子生活だった。
子どもたちにピアノを教えたりされており、とても品のある、しかし芯の強い女性だった。
依頼を受けた事件は1991年に終わり、その後数回お目にかかったことはあったが、あとは年賀状を交換するだけだった。
昨年、私が現在の事務所に移ったという通知を出すと、Mさんから「先生に連絡を差し上げようと思っていたんですよ」と久しぶりに電話がかかった。
ヘルパーさんによる事故でケガをされたとのことで、その事件の依頼を受け、再びMさんとのつきあいが始まった。
Mさんは、78歳になっていたが、あいかわらず一人で車椅子生活をされていた。
もともと下半身には力が入らないのだが、事故後病院で懸命にリハビリをされ、事故前と同じとまではいかないまでも、一人で生活ができるまでになっていた。
Mさんの部屋には、車椅子に乗っても生活ができるよう、様々な工夫がなされていた。
また人間というものは、自分一人でやらないといけないと思って行動すると、ここまでできるんだということをMさんから教えられた。
Mさんの生き方は、私が年老いた時の目標のように思えた。
事件は昨年8月に終わった。
ところが、11月になって「今、病院に入院している」とMさんから電話が入り、実は9月に玄関でころんで骨折したとのことだった。
その後、回復はされたものの、いつまでも病院にいるわけにもいかず、また万一再び同じようなことが起こったらという不安もあって、今年3月、京都市内の北の方にあるケア付きの高齢者住宅に移る決心をされた。
今日は、借りていたアパートの明渡のために来るという連絡をもらったので、アパートまで会いに行った。
既に新しい住宅に1ヶ月ほど生活され、「やはり今、移って良かった」と言われたので、少しホッとした。
別れる時、タクシーに乗って手を振ってくれるMさんを見て、なんだか涙が出てきた。
Mさんなら、新しい環境でも頑張って生活していかれることと思う。
周囲にケアをしてくれる人もいるので安心だ。
また元気な顔を見に、お邪魔しようと思う。
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