1. 忍び寄る「経済的徴兵制」
ブログ マチベンの日々

忍び寄る「経済的徴兵制」

 
2016年11月20日、とうとう、自衛隊は、PKO(国連平和維持活動)として新たに「駆け付け警護」の任務を付与されて、青森から南スーダンへ出発した。
南スーダンの状況について、安倍さんは「衝突はあったが、戦闘行為ではない」という趣旨の答弁をしたが、現実には、内戦が再燃し、紛争継続地には派遣しないとする「PKO参加5原則」が完全に崩れているということは、多くの人はうすうすでも感じている。
派遣される自衛隊員本人や家族の気持ちは、いかばかりであろうか。とうてい推し量ることはできない。
私たちにできることは、このような憲法違反の決定に強く抗議することだけしかない。
 
安保法成立以後、自衛官希望者は、激減しているという。
先日のテレビ番組の中でも、ある高校教師が、今年の自衛官希望者はゼロと語っていた。
 
将来、韓国などのように日本も徴兵制が施行されるのではないかという親の不安や野党の追及に対し、安倍さんら自民党閣僚は、徴兵制など決して導入しないと言う。
しかし、考えられるのは、「経済的徴兵制」だ。
 
「経済的徴兵制」というのは、貧困や格差など厳しい現実にさらされた若者が、事実上、軍隊に入る道を選ばざるを得ない状況をいう。
実際、アメリカでは、兵役は志願制だが、学費の「肩代わり」や医療保険加入といった条件に引かれて入隊する若者が少なくない。
 
日本でも、奨学金を借りて大学を卒業できたものの、就職先が決まらなかったり、非正規の仕事しかない若者には、奨学金返済が大きくのしかかる。
 
防衛省も、米軍の制度を参考に、自衛隊入隊を前提にした奨学金などが目玉の新たな募集制度を検討しているという(2016年7月2日付け赤旗)。
 
ジャーナリストの堤未果さんは、医療や教育、雇用など最低限の生活を保障する制度が貧弱になった社会には、経済的徴兵制が入り込む余地があると指摘する。
「『当たり前の生活が奪われれば、目の前のパンに手を出すよ』という、取材で会った米兵の言葉が忘れられない。戦争は日常で始まる。経済的徴兵制を機能させない社会づくりが必要です」
(2016年4月29日付け京都新聞朝刊)
 
思い切って社会のしくみを根本から変えていかないと、この国の若者が戦地に行かされるのは、そんなに遠い将来ではないような気がしてならない。
 
 
 

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