1. 上岡龍太郎さんと父小林為太郞弁護士(その2)
ブログ マチベンの日々

前回のブログを書いていると、どうしても上岡龍太郎さんの父親小林為太郞弁護士の本「いごっそう弁護士為さん」をもう1度読みたいと思うようになった。それで、知人の弁護士に尋ねたところ、幸いなことに、A弁護士が持っていた。

 

その本には、為さん自身の筆による遺稿と共に、何人かの人によって為さんの人柄を記す文章が寄せられていた。

その中に上岡龍太郎さんの文章もあった。これが、とてもウィットにとんだ文で、思わず大笑いしてしまった。為さんの人柄はもとより、父と息子のなんとも言えない優しい関係が感じられる文である。少し長いが一部を紹介する。

 

「儂(わし)が弁護士で、お前が漫才師か。同じ”シ”がつく、口が商売の仕事やな」

昭和35年。私が漫才をやるとなった時、親父は言った。

「世間は、弁護士の方がレベルが高いように見るかもしれんが、それは違う。儂ら弁護士なんか見てみィ、毎日、辛い・悲しい・苦しい・だました・盗んだ・殺された、こんな事ばっかり言うとるんや。それに比べてお前らは、楽しい・面白い・明るい・愉快な・笑い、それをテーマにしゃべっとる。同じ”言葉”が商売でも、エライ違いや。漫才師の方がズッと上や。それに、国家試験なんてゆうけど、儂らのは、ホンの一部の者がこしらえた問題に答えるだけの、あれは謂わば官僚試験や。その点お前らは、国民の多数に審判をあおぎ、支持されんことには食うて行けん。これがホンマの国家試験や、なッ。どこから見ても、弁護士より漫才師の方が、レベルが高いッ!」

・・(略)・・

その時の私には、ナグサメにしか聞こえなかった、そこで私が「しかし、親父が弁護士で息子が漫才師やから、この調子でいくと、孫は詐欺師やで」というと、「ハッハッハッ、そりゃいいな」と、豪快に笑いとばしていた親父。

・・(略)・・

豪快で繊細で大胆で気が小さくて、正義感が強くて、制服と権力が嫌いで・・(略)・・金儲けが下手で照れ屋で、単細胞で直情径行、思慮深くって優柔不断、そんな親父の独特の気風は、今もこの世に残っている。

私の体の中に、ハッキリと残っている。

・・(略)・・

 

上岡さんは、京都人だったが、やはり土佐人の気骨が受け継がれていたんやなあ、と思った。

合掌

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