友人のA弁護士の事務所の忘年会に誘ってもらい、参加した。
場所は、京都祇園にある「十二段屋本店」。老舗だが、これまで訪れたことはなかった。
A弁護士からは、事前に、十二段屋について書かれている本の抜粋を渡された。
タイトルは、「民藝運動家たちとしゃぶしゃぶ」。
時は昭和20年代。十二段屋の2代目店主西垣光温氏による「しゃぶしゃぶ誕生物語」であった。
十二段屋に到着。
玄関に入ると、本で紹介されていた、光温氏がデザインしたと言う煙突のようなものが付いた銅鍋が飾られていた。
現在、使用されている鍋は、これとは少し異なるとのこと。
2階の畳部屋の個室に案内された。
その部屋には、民藝運動に傾倒していた光温氏が、売れない時代に店に住まわせていたという棟方志功が描いたふすま絵がずらりと並び、河井寛次郎など多くの陶芸家らの作品も無造作に(手に取ることができる)飾られてあった。
まるでギャラリーのような部屋だった。
「十二段屋」の名物料理は、「しゃぶしゃぶ」である。
本にその由来が書かれてある。
それによると、光温氏が、京都の骨董街で風変わりな中国の銅鍋を見つけ、店の玄関に飾っていたところ、軍医として満洲に行っていた鳥取県の医師吉田璋也からその鍋が中国の鍋料理「シュワヤンロウ」に使う鍋であることを聞き、その料理を何度も試行錯誤を重ね「牛肉の水炊き」として日本風にアレンジしたということだった。
本には、「うちのしゃぶしゃぶは、まったくアクが出ない」と書かれてあり、本当にアクは全く出なかった。
仲居さんに「なぜ?」と尋ねたが、銅鍋の構造と燃料が炭であること以外にはよくわからないという返答だった。
肉も柔らかく、美味しかったことは言うまでもない。
なんか、すごく格調高い忘年会であったような気がした。