私が書き始めた「NHK朝ドラ『虎に翼』をより楽しむために」も既にシリーズ5回目となった。
ネットで他の人のブログなどの検索をしていると、同じ弁護士、あるいは研究者の方などが「虎に翼」を解説されているのを見つけたりする。
それらを読ませてもらうと、私たち法曹の世界の出来事であっても、これまで知らなかった史実がたくさんあり、とても興味深い。
私が(その1)で書いた「権利の濫用」についても、その後、新たにわかったことがあるので、今回は再度、「権利の濫用」判決について紹介する。
法学部の学生ならたいてい勉強する著名な「権利の濫用」判決は、大審院昭和10年10月5日付けの「宇奈月温泉事件」判決である(内容については省略)。
だから、2024年4月17日付けの当ブログ(その1)で紹介した、明治34年に大審院が初めて「権利の濫用」を認めたという判決は、ブログを書くために調べていて初めて知った。そしてその時は、ドラマの中での判決は、架空のものだと思い込んでいた。
しかし、最近になって、それが、実在の判決だったことを知った。
大審院昭和6年7月24日の「物品引渡請求事件」判決である。
この事件は、ドラマの中で描かれたように、浮気をしたり暴力を振るったりする夫に対し別訴で離婚を求めていた妻が「衣類を返して欲しい」と訴えたもの。
大審院(今の最高裁判所にあたる)は、離婚成立までは夫に「管理権」があるとして返還を認めなかった原審(第2審)判決を破棄し、夫の財産管理権の濫用であるとして、妻への衣類の返還を命じたのであった。
ドラマは実在の事件を取り上げていたのだった。
この昭和6年判決が、4年後の「宇奈月温泉事件」判決につながっていったと思うと、実に興味深い。