1. NHK朝ドラ「虎に翼」をより楽しむために(その6)尊属殺人違憲判決
ブログ マチベンの日々

2024年7月3日放映の「虎に翼」では、昭和25年、刑法200条の尊属殺人罪について、最高裁が合憲判断を下したという場面がありました。

 

六法を読むと、刑法200条の尊属殺人罪の規定は、現在は「削除」されています。

 

刑法200条は、自己または配偶者の直系尊属を殺した者について、通常の殺人罪とは別に、尊属殺人罪を規定し、それが適用されると、法定刑は死刑または無期懲役に限られ、執行猶予は付けられませんでした。尊属殺人の規定は道徳の乱れの歯止めとして機能しているというわけです。なお、この多数意見に対し、朝ドラの「穂高教授」のモデルである「穂積重遠」裁判官は反対意見を書いています。

 

これは明らかに憲法14条が定める「法の下の平等」に反するとして争われたのでした。

 

そして、合憲判決が出てから23年が経った昭和48年4月4日、最高裁大法廷は、日本で初めて違憲審査権を発動し、刑法200条は違憲であるとの判断を下しました。

 

この殺人事件は、昭和43年10月、栃木県宇都宮市で起きました。長年にわたって近親相姦を強いられ子どもまで出産させられていた娘が実の父親を殺した事件でした。娘は「殺そうと思ってやった」と。

 

昭和44年5月29日の第一審判決は、尊属殺人罪について憲法違反であるとしましたが、同46年5月12日の控訴審判決は、一転、合憲であるとし、実刑判決を下しました。

 

しかし最高裁は、この事件を小法廷から大法廷に回し、とうとう違憲判決が下されました。被告人は懲役2年6月・執行猶予3年の刑となりました。

 

そこには、法律の内容がおかしい、不合理だと感じて闘った弁護士がいました。そして、それを正面から受け止めた裁判官がいました。

 

ちなみに、昨日(2024年7月3日)、最高裁大法廷は、旧優生保護法の下で不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、障害者らが国に損害賠償を求めた事件で、旧法を「立法時点で違憲だった」とし、憲法13条・14条に違反すると判断しました。

 

喜びにわく弁護団の中にも、また最高裁大法廷の判事の中にも、知り合いの顔がありました。こうやって歴史は、今も1歩1歩変わっていくと感じました。

 

 

 

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