朝ドラ「虎に翼」で、型破りの強烈な個性で目を引くのは、俳優滝藤賢一さん演じる「多岐川幸四郎」裁判官。寅子の上司である。
この多岐川のモデルは、宇田川潤四郎裁判官(1907~1970)。
新憲法の下で最高裁の初代家庭局長になり、日本になかった家庭裁判所を創設した。
多岐川がドラマに初登場した時に滝での願掛けの場面があったが、宇田川さんが滝行をしていたのは実話らしい。
宇田川さんは、家庭裁判所の設立や子どもたちの支援、女性の地位向上に全力をかけ、「家庭裁判所の父」とも呼ばれている。
女性の地位が低いままでは安心できる健全な家庭は成り立たない、子どもと家庭の問題は地続きと考えていた。
1969年の朝日新聞のインタビューでも「女性の人格は無視され、男性の暴力のもとに泣いている女性が多い」「国民のすべてが暴力支配を徹底的に排除し、『法の支配』の実現を強調することは大きな義務である」と答えた。
宇田川さんは、京都にもなじみが深い。
京都少年審判所長をつとめ、宇治少年院の設立に尽力し(2008年閉鎖)、京都家庭裁判所の所長に就任したこともあった。
宇田川さんが亡くなって約55年の歳月が経過しようとしている現在においても、彼が求め描いた家庭裁判所の役割は微塵も変わっていない。
高齢化に伴う成年後見事件の増加、今年5月に民法改正で成立した共同親権に関する紛争の増加が見込まれるなど、今後ますます家裁が関わる事件が増え続けることは明らかである。
しかし、その家庭裁判所の裁判官・調査官・書記官などの人員体制は、国民のニーズにとうてい見合っていないのである。
改正民法は、2年以内には施行される。
それまでに、家裁の真の目的が達せられるよう、家裁の体制の充実を求める声をより広範囲にあげていかなければならない。