(女性弁護士の法律コラム NO.102)
昨今の情報量の多さとそれに反比例するような自分のモノ忘れの速さに、メモの重要性は日々痛感するところである。
ところで、日常の事件においてもメモはきわめて有効なので、若干紹介してみたい。
~妻のメモも残業の証拠~
労働者の残業時間を把握するのは、本来、使用者の責任であるが、タイムカードがない職場も少なくない。
このような職場で働く労働者が、未払いの残業代の請求や長時間労働による病気について労災申請をするような場合には、残業時間の証明が重要になる。
そんな時、メモを有力な証拠とした裁判例があるので紹介しよう。
大阪の男性が未払いの残業代を求めた事件で、残業時間を裏付ける客観的な証拠はなかったが、裁判所は、毎晩夫の帰りが遅いことを心配した妻が「01年9月27日午前2時半」などの帰宅時間を書いたメモや営業所の戸締まり記録・報告書などの間接的な証拠から残業を認めた(2005年3月大阪地裁、2005年12月大阪高裁)。
また、残業代や休日出勤分の賃金を払ってもらえなかった男性が退職後、会社を訴え、東京高裁(2008年5月28日判決)は、男性が手帳に書いていたメモで残業時間を認定した。
裁判の中で会社は「手帳の記載は信用できない」と主張したが、一審の横浜地裁は「労働時間管理を行うべきなのは会社、疑義があるなら会社が根拠となる記録を示すべき」と指摘した。
家族の皆さん、夫や父親が仕事で毎晩遅く帰って来るような時には、その帰宅時間もメモしておきましょう。
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