(女性弁護士の法律コラム NO.105)
刑事事件におけるメモの重要性。
何か犯罪の容疑で逮捕勾留され、身に覚えがないにもかかわらず、警察官が机をドン!とたたいて「お前!早く本当のことを言わんかい!」などと怒鳴って暴力を振るうということは決してテレビドラマや映画あるいは戦前の警察での出来事ではない。
●2006年3月兵庫県警に詐欺容疑で逮捕された女性
「20分間、怒鳴られっぱなし」「警察の都合のいい回答をするまで続くと思うと、絶望的な気分になる」
●大阪地裁所長襲撃事件で強盗致傷罪に問われた男性(無罪確定)
「ヘタレと何度も言われバカにされた。お前には人間の血が流れていない」「暴力を振るわれ口の中がキレて血が出るし一瞬息ができなかった」
いずれも近年明るみに出た警察内での違法な取調べの実態である。
これらが明るみに出たのは、実は、彼らは、留置場の中で、弁護士が差し入れた「被疑者ノート」と呼ばれる取り調べの様子を日記風に記入できるノートをつけていて、これが裁判で証拠として採用されたからである。
この「被疑者ノート」というのは、弁護士会が作成したものであるが、別に普通のノートや手帳に書き綴ってもかまわない。警察官による暴言や暴力があっても、なかなか信用してもらえないのが現状である。このように取調の状況をメモしておくことは密室での自白強要を防ぐ重要な手段である。
但し、このようなノートは裁判所が必ず証拠として採用するとは限らないので、冤罪を無くすためには、現在、議論されている取調中の録音・録画(取調べの可視化)などが全面的に実施されなければならない。
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