(女性弁護士の法律コラム NO.112)
人気お笑い芸人の母親が生活保護を受けていることを女性週刊誌が報じたことをきっかけに、生活保護制度全体に対して大バッシングが起こっている。
でも、生活保護も申請できぬまま「孤立死」や「餓死」するなどの悲惨な社会実態があるにもかかわらず、制度全般や利用者全体に問題があるかのごとき報道は許せない。
そのタレントに多くの収入があるにもかかわらず、母親が生活保護を受けていたことがあたかも不正受給であるかのような論評も見られるが、そもそも生活保護法上、扶養は保護の要件ではない。
実際に親族から「扶養」が行われた場合には収入認定され、その金額の分だけ保護費が減額されることはあるが、扶養義務者の扶養は、生活保護を受けるための前提条件ではないのである。
また、民法で定められている扶養義務についても、強い扶養義務を負うのは、夫婦の間と未成熟の子に対する親だけで、兄弟姉妹や今回のケースのような成人した子の老親に対する義務は、「経済的に余裕があれば援助する義務」にすぎない。
更に、扶養の程度や方法は、義務者の資力だけでなく、権利者の落ち度、両者の関係の強弱や濃淡などを総合考慮して家裁が決めるとされている。
今回のバッシングの中心となっている1人が自民党の片山さつき議員。
誰かがTwitterで「僕が片山さつきの親族だったら、すぐに仕事を辞めて扶養してもらう」とつぶやいて皮肉っていた。
本質をついた、つぶやきで、拍手!
報道機関そして国は、制度利用者の声や実態にもっと目を向けるべきである。
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