1. 10歳児の告訴能力認める(名古屋高裁金沢支部判決)
女性弁護士の法律コラム

 
(女性弁護士の法律コラム NO.116)
 
未成年の姉妹への準強姦罪などに問われ、一審では懲役13年の判決を受けた男性の控訴審判決で、名古屋高裁金沢支部は、7月3日、当時10歳だった妹の告訴能力を認めなかった一審富山地裁判決を破棄し、審理を富山地裁に差し戻しました。
 
この判決に関連して、少し「告訴」について解説しましょう。
 
「告訴」というのは、警察や検察に対し犯罪の事実を申告して、犯人の処罰を求める意思表示です。
告訴は、一般には、捜査の端緒となるものですが、「親告罪」と言って、告訴がなければ起訴できない罪があります。
強制わいせつ罪や強姦罪などがこの親告罪にあたります。
 
告訴するには、それができるだけの能力が必要であり、刑事訴訟法の教科書には、下記の2つの要件が必要と書かれてあるものもあります。
① 捜査機関に対し、自己の犯罪被害事実を理解し、申告して犯人の処罰を求める意思を形成する能力
② 告訴の結果生まれる利益や不利益を理解する能力
 
これまでは、およそ中学生以上であれば、告訴能力があるとされてきました。
 
今回の判決は、告訴能力の要件としては上記①で足りるとし、「当時10歳11ヶ月の小学5年生で普通の学業成績を上げる知的能力を持った妹が、被害状況を具体的に申告した上で、犯人としての男を特定して処罰を求める意思を申告したのだから、告訴能力を備えていたと言うべき」と判断しました。
 
ちなみに、仮に被害者が成人であっても、知的障害のある場合については、告訴能力について争われることがあります。
2010年12月21日、福岡高裁宮崎支部は、知的障害のある女性(30歳)に対する強制わいせつ事件において、女性の告訴を無効とした一審判決を破棄し、審理を宮崎地裁に差し戻しています。
 
 
 
 
 

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