(女性弁護士の法律コラム NO120)
大阪の橋下市長の従軍慰安婦強制連行「証拠なし」発言(8月21日)について。
私は、大学生の時、当時、従軍慰安婦だった女性たちの生々しく、しかも吐き気をもよおすような体験談を本で読んで、大きな衝撃を受けた。
日本が加害者であるにもかかわらず、「(もし証拠があるなら)韓国の皆さんにも出してもらいたい」というのはなんと傲慢な発言だろう。
元「慰安婦」らの証言こそ、確かな「証拠」にほかならない。
戦時中、慰安所が存在していた国や地域は、日本、中国、フィリピン、インドネシアなど広範な地域に及んでいた。
そして、今日までに、被害者「慰安婦」による裁判が何件も提起され、多くの裁判所の判決の中で「日本軍・政府の関与」「強制」の事実が認定されてきている。
(2003年7月22日東京高裁判決)
「業者らは、甘言を弄し、あるいは詐欺脅迫により本人たちの意思に反して集めることが多く、さらに、官憲がこれに加担するなどの事例も見られた」
(1998年4月27日山口地裁下関支部判決)
「従軍慰安婦制度は、慰安婦原告らがそうであったように、植民地、占領地の未成年女子を対象とし、甘言、弾圧等により本人の意思に反して慰安所に連行し・・・性交を強要した」
また、橋下市長は、「当時の時代背景において、慰安婦制度がどういうものだったのかを真正面から議論しなきゃいけない」などと述べるが、上記下関支部判決は「いわゆるナチスの蛮行にも準ずべき重大な人権侵害」「これが20世紀半ばの文明水準に照らしても、極めて反人道的かつ醜悪な行為であったことは明白」とも判示している。
更に、上記山口地裁下関支部判決は、日本が慰安婦原告らの被った損害を回復するための特別の賠償立法をなすべき義務を怠ったことに過失があるとして、損害賠償義務も認めた。
しかも、日本政府も、1993年8月4日付け内閣官房長官談話(「河野談話」)において「甘言、弾圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかにあった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」と述べている。
橋下市長の発言は、本当に許せない。
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