(女性弁護士の法律コラム NO.133)
最近の銀行というのは、昔なら無料だったものが、どんどん手数料がかかるようになっている。
例えば、時間外のATMによる出金、枚数の多い両替などなど・・・・
でも、こんな「ぼったくり」があるとは知らなかった。
銀行は、預金業務や貸付業務以外に「遺産整理業務」というのも行っている。
内容は、相続財産の調査や相続財産目録の作成、遺産分割協議書の作成そして相続財産の運用計画の助言など。
最終的には、最後の「相続財産の運用計画」が目的なんだろうと思う。
その遺産整理業務に関し、次のような相談を受けた。
夫を亡くした80代のAさんは、ある大手銀行にこの遺産整理業務を依頼した。
その後、相続税申告手続きを税理士に依頼し、税理士が相続財産目録を作成することになったので、税理士がAさんを伴い銀行を訪れた際、口頭で「相続財産目録の作成はうちの方でするから結構です」と断った。
ところが、しばらくして、銀行は、相続財産目録を作成し、高齢のAさんに交付してしまった。
Aさんの税理士は、「口頭で断ったではないか」と抗議したものの、銀行側は「そのような記録はない」「Aさんは、何も言わずに目録を受け取った」と強気の姿勢。
「ぼったくり」と思ったのは、その手数料の金額である。
委任契約書によると、中途解約の場合、相続財産目録を交付する前なら「定額30万円」、相続財産目録交付後であれば、「相続財産に一定の料率を架けて算出された合計金額の50%+30万円」となっており、結局、Aさんは、相続財産目録を受け取ってしまったばかりに数百万円の解約手数料の請求書が届いた。
つまり契約後、目録交付前であれば、仮に財産調査に着手していなくても、銀行は30万円の手数料を請求することができる。
また、目録さえ交付してしまえば、(相続財産の額にもよるが)その手数料はグンとはねあがる。
しかし、相続財産目録というものは、弁護士でなくても、たいていの法律事務所の多少の経験ある事務局であれば、作成できるものである。
実際Aさんが交付を受けた目録も、うちの事務所の事務局なら作成できるような内容であった。
消費者契約法は、たとえ契約してしまっても、その条項が消費者の利益を不当に害する場合には、その条項を無効にすることができる。
私としては、このような「ぼったくり」は消費者契約法により十分争える気がした。
しかし、最終的にAさんは、銀行との紛争は望まないとして手数料を払われたようである。
それにしても、このような大企業の「ぼったくり」は許せない。
銀行に「遺産整理業務」を委任する場合には、十分慎重に検討してほしい。
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