(女性弁護士の法律コラム NO.138)
久しぶりに映画を観て泣いた。
「約束」。
三重県名張市で1961(昭和36)年3月に起きた毒ぶどう酒殺人事件の死刑囚奥西勝さんの生涯を追った映画。
京都シネマでの上映は6月13日までなので、急いで観に行って来た。
名張毒ぶどう酒事件は、未だ再審の扉があかない死刑冤罪事件として有名である。
映画「約束」は、事件発生から現在までの奥西さんの生涯を、俳優による演技と、長年にわたり東海テレビが取材し保有していた実際の映像などを織り交ぜて構成された作品で、事件そして裁判の流れがよく理解できた。
奥西さんを演じた仲代達矢、その母を演じた樹木希林の演技は、セリフは少ないものの、思いがあふれていて圧巻だった。
また、支援者の川村さんを演じたのは天野鎮雄。アマチンは、私が中学生の頃は、東海ラジオの深夜番組の人気DJだった。彼の演技も川村さんの実直な人柄をよく出していた。
自白以外の物証は何ひとつなし。
1964年一審の津地裁は無罪を言い渡したが、続く名古屋高裁で逆転の死刑判決、1972年最高裁で死刑判決が確定した。
第7次再審請求では弁護側が重要な新証拠を提出したにもかかわらず、2006年12月名古屋高裁は、「自ら極刑となることが予想される重大犯罪について進んでうその自白をするとは考えられない」と述べて、自白の信用性を認めた。
事件当時35歳だった奥西さんは、現在、86歳。高齢で体調もすぐれないという。
タイトル「約束」の意味・・・・
奥西さんと支援者川村さんとが、「(無罪を勝ち取るまで)しぶとく、しぶとく生きましょう」という固い約束。その川村さんも今はいない。
司法が生身の人間の人生を奪ったことに大きな怒りを感じる。
でも司法にすがるしか方法がない奥西さん。
最高裁は1日も早く奥西さんを助けてあげてほしい。
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