(女性弁護士の法律コラム NO.167)
現在、過労自殺(労災認定されている)により死亡された労働者の遺族の代理人として、会社に損害賠償を求めて提訴した事件を担当している。
会社側は、長時間労働が自殺の原因であることを認めず、「夫婦の不和」が原因だと主張している。
証拠として、亡くなられた本人のメールを多数提出しているが、会社側の代理人弁護士は、準備書面の中で、夫婦のメールの内容が「今から帰る」「仕事」などといった素っ気ないものが多いので、愛し合っている夫婦なら、もっと愛情を裏付けるメールがあるはずだと反論している。
会社側の代理人弁護士が本当にそう思っているのか、あるいは、会社側の立場に立って心にもないことを書いたのかは定かではないが、私が会社側代理人だったら、このような準備書面は書けないなあ。
夫婦の「愛の表現」など多種多様である。
およそメール上の言葉だけで判断できるはずがない。
メールではないが、昔よく言われた、家では「メシ」「風呂」「寝る」しか言わないおとーちゃんにもきっと夫婦の愛情はあるだろう。
私自身、メールでゴチャゴチャ書くのがあまり好きではなく、誰に対しても、用件のみの素っ気ないメールを書くことが多い。
長時間労働で自殺にまで追いやられた挙げ句、メールの表現から「夫婦に愛情がなかった」とまで言われたら、遺族の無念な思いや怒りはより一層増すばかりである。
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