1. PC遠隔操作事件と弁護人
女性弁護士の法律コラム

PC遠隔操作事件と弁護人

 
(女性弁護士の法律コラム NO.171)
 
記者会見まで開いて「無罪」と言っていた被告人が、一転して「すいません。私が真犯人です」ということになったPC遠隔操作事件。
 
私たち弁護士にとって、「絶対にやっていない」と言っていた被疑者や被告人が、途中から「実は、やっていた」とくつがえすことは、そんなに珍しいことでもない。
一生懸命「無罪」として弁護活動をしていたのに、それが事実ではなかったことを知ったときは、正直、ショックを感じる。
若い頃は、その若さ故に、特にショックが強かった記憶がある。
被疑者・被告人との信頼関係が破壊されたと感じれば、私撰であれば、弁護人をやめることもありうる。
 
今回のPC遠隔操作事件の主任弁護人である佐藤博史弁護士は、記者会見で、「全く裏切られたような否定的な感情はない」「私自身は、否認している被疑者が『実は、やってました』と告白することに何回か遭遇している。それをもとに弁護するのが弁護士だ。裏切られたと非難するものでもない」と言っておられた。
そして、被告人には、即座に「あなたを見捨てない」と言われたそうだ。
 
佐藤弁護士は、再審無罪を勝ち取った足利事件の主任弁護人であった。
長年の刑事弁護活動に裏打ちされた経験で、被告人を「見捨てることはできない」と判断されたのであろう。
 
被告人にとって、多くの善良な人々を巻き込んだ罪の重さは、はかりしれない。
 
 

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