(女性弁護士の法律コラム NO.180)
8月26日夜、京都弁護士会で「後見制度信託支援」についての研修があったので参加しました。
京都家裁から、講師として裁判官と書記官が来られ、第2会場も設けられるほどの盛況ぶりでした。
(なお、後見制度信託支援の概要については、2014年8月27日付け「法律コラム:その他」を参照してください。)
2012年2月から始まった制度ですが、開始以前から、弁護士会その他の関連団体などが反対の意見書を提出しており、今回の研修は、単に制度の手続きを弁護士に説明するという内容でしたが、あらためて色々問題を感じてしまいました。
実際、今後の高齢化社会を見通すと、後見事件は増加する一方で、確かに、現在の家裁の人員では不正事例を見抜くなどの「監督」は困難であろうと思われます。
でも、本来であれば、事件数増加に見合う人員を配置するなり、法定後見監督人との連携を強化するなどの方策が検討されるべきではなかったでしょうか。
この制度の最大の問題点は、その「解決」の方策を、民間の大企業である信託銀行に委ねてしまっていることです。
信託銀行にとっては、顧客を確保する手間や努力の必要なく、契約が取れるということになるのです。
しかも、信託契約する際には、原則として、市中銀行の預金などは解約した上で、信託銀行に入れることになるというのだから、信託銀行に移る財産は相当な規模になることが予想されます。
また、選任された専門職後見人は、選任後数ヶ月間で、本人の日常生活に必要な支出の見通しと適切な生活支援のプランを計画し、信託財産に入れない必要金額を算出しなければなりませんが、はたして、就任されたばかりの専門職後見人にわずか数ヶ月で本人にとって適切な判断ができるでしょうか。
制度はまだ始まったばかりですが、制度の運用を注意深く見守っていかなければならないと思いました。
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