1. 控訴審から受けた、ある離婚事件
女性弁護士の法律コラム

控訴審から受けた、ある離婚事件

 
(女性弁護士の法律コラム NO.201)
 
日本の裁判は、3審制で、例えば、離婚訴訟であれば、家裁→高裁→最高裁と3回裁判を受けることができます。
ただ、最高裁は、上告理由がかなり制限されていますので、事実を争うことができるのは、2審までです。
しかも、離婚事件のような場合、家裁段階で本人尋問などたいていの事実関係の証拠調べは終わっていますので、証拠書類を追加で提出することは可能ですが、高裁でもう1度本人尋問をすることは、申請しても高裁が採用してくれることはかなりマレです。
 
昨年末頃、控訴審から離婚訴訟を引き受けてほしいとの依頼がありました。
それも、夫が妻に対し離婚を求めている事案での妻側からの依頼でした。
家裁での第一審は、別の弁護士が担当し、夫の離婚請求が認められてしまい、妻にとっては敗訴判決でした。
事案は、夫との夫婦関係の悪化と言うより、長年にわたって同居してきた夫の親からのモラルハラスメントとも言えるような行為が原因での夫婦の別居でした。
 
彼女の話では、家裁を担当した弁護士は控訴審で判決を覆すことは難しいと言っているということで、私も彼女が持参した家裁の判決だけを読む限り、かなり難しい気がしました。
しかも、控訴の理由書は、控訴してから50日以内に提出せねばなりません(民訴規則182条)。
でも、彼女の必死な姿に打たれ、引き受けることにしました。
理由書提出期限がちょうど年始早々になっていたので、とりあえず期限を2月まで延期してくれるよう裁判所に上申しました。
 
次に、家裁での訴訟記録一式が手元に届いたので、早速、読んでみました。
彼女が「離婚したくない」「夫婦としてやり直したい」と言っていたからでしょうか、意外にも、家裁段階では、夫の言い分に対する詳細な反論や義親から受けた仕打ちによる彼女の苦しみがにじみ出た書面などは提出されていませんでした。
 
そこで、家裁での尋問調書を丁寧に読み、「親族の不和」を離婚理由とする過去の判例を調べ、またモラルハラスメントの本も読んで、かなり力を入れて控訴理由書を書き上げ、更に彼女の苦しくつらかった思い、夫への愛情などを書いた陳述書も作成しました。
 
予想どおり、高裁は第1回で結審しましたが、すぐその日から、裁判官を間に入れた和解(話し合い)が始まりました。
裁判官は、夫の親との関係で彼女が置かれていた状況や気持ちを理解してくれた上で、そのことを含んだ条件をつけて和解離婚を勧めました。
 
そして、彼女も離婚を決意し、和解離婚が成立しました。
 
多くのDVやモラハラ被害の女性がそうであるように、同居している時には、彼女には、自分が受けている仕打ちがモラハラであるとは思いもせず、自分を殺し「嫁」として必死につかえてきました。
彼女は、別居後、カウンセリングなどを受ける中で、徐々に、冷静になってそれまでの自分を見直すことができるようになってきたと語っていました。
 
彼女の事件は、比較的短い期間で終わりましたが、何回も打ち合わせ、高裁への行き帰りの電車の中でも色々話をしたりして、割と「濃い」時間を共有できたと思っています。
もう今の彼女は、ひたすら耐える女性ではありません。
次に会う時がとても楽しみです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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