(女性弁護士の法律コラム NO.221)
福島原発事故が発生して5年目となる2016年3月11日の直前の3月9日、大津地裁は、再稼働中の福井県高浜原発3・4号機の運転差し止めを命じる仮処分決定を下した。
翌日以降、新聞各紙が決定内容を詳細に報じているので、決定内容の紹介はしないが、とりわけ決定の中で「発電の効率性でもって、甚大な災禍と引き換えにすべきとは言い難い」と論じられているところが、すべての出発だと私は思う。
福島では、未だにふるさとに帰れず、否、ふるさとを失った被災者が多数存在する。
電気料金や地元経済という経済効率などと比べものにならないほどの多くのものを福島では失ってしまったのである。
「福島原発事故の原因究明は・・・津波を主な原因として特定できたのかも不明だ」
「災害が起こるたびに『想定を超える』災害だったと繰り返されてきた過ち」
「事故発生時の責任を誰が負うか明瞭にし・・・避難計画を含んだ安全確保対策にも意を払う必要がある」
この裁判の弁護団長である元裁判官井戸謙一弁護士は、「裁判所は被災者に希望を持って震災5年を迎えてほしいと信じたい」と語る(2016年3月12日付け京都新聞朝刊)。
この決定を書いた山本善彦裁判長は、直接、会ったことはないが、私の大学の後輩だと思う。
井戸弁護士は「裁判官の世界で無難に生きようとすれば却下しただろう。それがこれまでの体制だった。山本裁判長は正しいと思う決定を出し、批判も含め反響も折り込み済みだろう。」と続ける。
福島原発事故を経ても、なおも、「原発を再稼働する方針に変わりはない」と発言する政府。
原発事故後も再稼働を容認する裁判官もいる中で、勇気ある決定に大きな敬意を表したい。
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