(女性弁護士の法律コラム NO.234)
今日から年賀はがきの受付が始まった。
今朝の京都新聞で、「お年玉付きくじ」付きはがきを国に提案したのは、京都の男性であったことを知った。
国は、提案には乗り気でなかったが、男性の熱意が勝って世界初のくじ付きはがきが1949年12月に発行されたという。
国が当初反対した理由の1つは「賭博的で射幸心をあおる」
それから67年後の2016年12月14日。
与党自民党や日本維新の党などの賛成多数により、カジノ法案が強行採決され、成立した。
カジノは、現行刑法の賭博罪(185・186条)に該当する。
そのカジノを、国が率先して導入したのである。
刑法の教科書(大塚仁著)には、賭博罪について「偶然的事情によって財物の獲得を僥倖しようとする行為を内容とする犯罪である」と書かれてある。
そして、「私有財産制度のもとでは、自己の財産を任意に処分することは、本来、各人の自由に委ねられているところであり、・・・別段、罪悪とするにあたらないようでもあるが、一面、これら偶然の事情によって財物の獲得を僥倖しようと争う行為を容認するときは、国民の射幸心を助長し、怠惰浪費の弊風を生じさせ、健康で文化的な社会の基礎をなす勤労の美風をそこなうばかりか、さらに、暴行、脅迫、殺人、傷害、窃盗、強盗、詐欺、横領その他の副次的な犯罪をも誘発し、ひいては、国民経済の機能に重大な支障をきたさせるおそれがある」と指摘されている。
競馬や競輪なども「賭博罪」に該当するが、「公設、公営、公益のため」「法令に因る行為」として違法性が阻却されてきた。
ところが、今回は、民営カジノが合法化されてしまうのである。
「カジノ」は、人が負けることによって潤うものにほかならず、刑法の教科書に書かれてあるとおり、勤労意欲を低下させ、挙げ句の果てには、犯罪にまで走らせる恐れがある。
30年以上も弁護士業をしていると、仕事柄、ギャンブルで人生を狂わせた人をたくさん見て来た。
破産申請をしても、免責(=借金支払が免除されること)決定が受けられないかも知れないことを悲観して、自殺した人。
競馬にはまって借金が増え、その借金を返そうとまた更に馬券を買う・・・そしてついには、会社の金にまで手を出して横領罪で処罰を受け、刑務所に入った人。
親がギャンブルに手をつけて負債を抱え、子どもと親子断絶してしまった人。
人は、強い意志を持つ人ばかりではない。
たとえ意思が弱い人でも、夢のある健全な人生を送ることができる社会にするのが、国の役目ではないだろうか。
もう、こんな政治は、ヤメにしよう。
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