(女性弁護士の法律コラム NO.242)
豪雨の後の京都は、連日、40度近くの猛暑日が続いている。外を歩くと、溶けてしまいそうな暑さである。
京都市内の各区役所では、毎週水曜日午後に無料法律相談が行われている。
昨日は、区役所の無料法律相談の担当日だったので、一番猛暑の時間帯に出かけた。
午後1時過ぎから午後3時過ぎまでの時間帯に6人の相談者の相談を聞かなければならないので、区役所の担当者から「一人20分でお願いします」と釘をさされる。
しかも、相談開始から15分経過すると、担当者が「あと5分です」と声をかける。
ゆっくり相談を聞くことができないのがつらいところである。
昨日の相談の中で印象に残った女性がいた。
その70代後半の女性は、借家の借り主で、家主から、突然、老朽化を理由に明け渡しを求める手紙が届いたとのことであった。
夫は既に亡くなり、娘らも独立し、長年住み慣れたこの家で一生を終えようと思っていたところに、家主から明け渡しを求められ、途方にくれていた。
娘さんが家主と交渉するようだったので、家主側の「老朽化」という理由は、なかなか認められるわけがないので、とりあえず「明け渡しはできない」と回答をし、家主の出方をみるようアドバイスをした。
一人で年金だけで生活しており、これから他に家を借りられる所もなく、長生きしたからこんなことが起こるのか、もう死んでしまいたい、などと目に涙をためて言われた。
法テラスを利用すれば、弁護士費用は立て替えてくれるので、弁護士に依頼することもできることを説明したが、たとえ分割でも返済していかなければならないので、そんな余裕はないとも言われた。
法的には大丈夫かもしれないが、今後家主が何をやってくるかわからないという不安な気持ちが抑えられないのであろう。
自治体の住宅などの公的な施設やサービスがもっと充実していたら、彼女のような心配もしなくてもよいのに・・
弁護士が受ける法律相談に楽しいものがあるはずもないが、暗い気持ちになった。
法律相談中、外はどしゃぶりの夕立だったが、終了して帰る頃には、雨は上がっていた。
雨上がり後のあまり涼しくないムッとする空気の中を、暗い思いで帰った。
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