1. (最新判例)夫婦同姓は「合憲」(最高裁)
女性弁護士の法律コラム

(最新判例)夫婦同姓は「合憲」(最高裁)

依頼者のUさんから、スイスに住む日本人の友達から来たカードを見せてもらいました。

差出人は「花子・山田・ワンダー」(仮名)と書かれてありました。

そうです。山田花子さんがスイス人のワンダーさんと結婚し、「花子・山田・ワンダー」さんという名前になったのです。

 

日本では、夫婦が同じ姓(名字)を名乗ることになっていますので、婚姻届を提出する時、夫か妻のどちからの姓を選ばなくてはなりません(民法750条)。

しかし、諸外国では、結婚しても姓が変わらなかったり、別姓を選択できたり、冒頭で紹介したような夫婦それぞれの姓を結合した姓を用いることができたりする国もあります。

夫婦同姓を強制しているのは日本だけと言われています。

 

日本が1980年に締結した女性差別撤廃条約は、「姓を選択する権利」が明記され、締約国に夫と妻が個人的権利を確保するための適当な措置をとる義務を定めています。

これまでに女性差別撤廃委員会から、この義務の履行するよう3度にわたって勧告がなされています。

 

希望すれば夫婦別姓を「選択的夫婦別姓」も含めた民法改正案は、1996年の時点で既に法務省法制審議会で策定されています。

その後も選択的夫婦別姓制度を求める声は一層高まり、何件も裁判が起こっているにもかかわらず、自民党保守層の反対反発は根強く、25年間国会に上程されていません。

 

最高裁は、夫婦同姓を定めた民法750条の規定については、2015年12月16日「合憲」としました。

 

そして、夫婦同姓を定めた民法750条とそれを前提とした戸籍法74条1号の規定が憲法違反であるとして事実婚カップルが別姓の婚姻届を提出し、受理されなかった3件の事件について、2021年6月23日、最高裁は、再び「合憲」の判断を下しました。

 

最高裁は、国民の意識の変化を認めつつも、「これらの諸事情を踏まえても、大法廷判決の判断を変更すべきものとは認められない」とし、「この種の制度のあり方は、国会で議論し、判断すべき事柄だ」としました。

 

しかし、最高裁の反対意見が述べるとおり、現実には多くの女性が不利益を受けており、長年にわたり国会で具体的な検討や議論がほとんど行われず、夫婦別姓の選択肢を定める措置をとっていないことは憲法24条に違反するものです。

その意味で、今回の最高裁判決は、司法の責任の放棄と言わざるを得ません。

 

なお、2021年6月25日付け毎日新聞朝刊には、元最高裁判事で15年判決では反対意見を書いた桜井龍子さんの記事が掲載されていました。

その中で、桜井さんは「がっかりする必要はない。最高裁は、いずれ違憲判断が出るとのメッセージを送っている」「言外に、判例変更に含みを持たせている。より国民の意識が変わったり、女性の自立が進んだりしたら、最高裁は違憲判断を出すと国会にプレッシャーをかけている」と読み解いています。

 

私たち国民世論で、国会を動かし、夫婦別姓選択制を実現させましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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