弁護士村松が担当した、山での遭難事案につき、危難失踪宣告が認められました(盛岡家裁審判)。
なお、相代理人は、山仲間の浅野則明弁護士です。
岩手県在住のTさん(80代)は、2019年5月、一人で静岡県中ノ尾根山(2296m)に登り、下山中に道に迷い、警察に救助の電話をしました。しかし、その後、連絡は取れなくなり、警察と山岳会が捜索しましたが発見されなかったという事案です。
これまで、山での遭難についての危難失踪事件をいくつか担当してきましたが、本人から警察に救助の通報があったという事案は初めてでした。
本人の「遭難」は明白で、簡単に危難失踪宣告が出るものと思っていました。
しかし、申立から数ヶ月して、家庭裁判所から話が聞きたいという連絡が入ったため、以前、ブログ「マチベンの日々」の方で書きましたが、不在者の家族とともに盛岡家裁まで赴き、裁判官と直接会って話をしてきました。
裁判官は登山経験がないようで、登山道というのは、テレビで観るような整備された道ばかりと思われていたフシがありました。
中ノ尾根山は、静岡県浜松市の最高峰で、南アルプスの深南部と呼ばれる部分に位置する山です。
そして不在者が道迷いを起こした地点は、人の顔の高さ程度の笹藪が広がっているため、展望もなく方向がわかりにくい場所でした。また、1度道を間違えると、急勾配の原生林の崖に転落する危険な箇所もあります。
裁判官は、不在者の山仲間と一緒に捜索に参加された家族からこの山の特徴の話を聞いたり、私たち弁護士の、不在者が遭難に至ったであろう状況の説明に熱心に耳を傾けてくれました。
いくら道迷いしたことが明白であっても、危難失踪宣告には、それが「人が死亡する蓋然性が高い事象に遭遇する」ということを山それぞれの特徴と共に明らかにしないといけないことを痛感しました。
やはり登山を趣味としてきたことが役に立った事案でした。
そして今年3月初めに、かなり詳細に書かれた審判が下され、危難失踪宣告申立が認められました。