民事裁判などを全面IT化する内容の民事訴訟法改正が2022年5月18日成立しました。
今回の主な改正は、これまで紙の書面や対面でのやりとりで行われてきた民事裁判について、記録は原則電子データ化され、提訴から判決までの手続をオンライン上でできるようにするという内容です。
これは、訴訟の流れをオンラインやペーパーレスにして、裁判を効率化・迅速化し、利用しやすくすることが目的とされています。
オンラインでのやりとりは、弁護士らは義務化されます。
弁護士をつけない本人訴訟は、現在、民事裁判の約半数を占めますが、この場合には、従来どおりの紙での運用も認められます。
これまで法廷で行われてきた審理もウェブ会議で参加できるようになります。
また、双方当事者が同意をすれば、6ヶ月以内に審理を終え、その後1ヶ月で判決をだす制度もできます。
憲法が定める「裁判の公開」の原則については、法廷にモニター画面を置き、傍聴者が裁判の審理などを見られるようにする見通しと言われています。
性犯罪やDVを受けた被害者が提訴する場合には、安全確保のため、訴状に住所や氏名を記載しなくてもよいという秘匿制度も創設されました。
しかし、課題もあります。
IT化が進めば進むほど、情報漏えいなどセキュリティー上の脅威は深刻化します。
証人尋問や調停で、当事者や弁護士以外の人がカメラに映らない場所から助言や指示をする恐れも考えられます。
また調停や和解などは、調停委員や裁判官に対する信頼ができていく中で成立することも少なくありませんが、はたして、対面でなく、画面上で信頼関係を築くことができるかどうか懸念されるところです。
裁判官も果たしてモニターを通して適切に心証が取れるでしょうか。
更に、誰もがITに精通しているわけではなく、不慣れな高齢者などへの支援も不可欠です。
改正法は、2025年度までに順次施行されていく予定です。