1. (労災)労災支給取り消し、事業主に権利(東京高裁)
女性弁護士の法律コラム

驚くような判決が下されました。

これまで、労働者が仕事によってケガや病気になったような場合、それを国が労働災害(労災)と認定して保険金の支払いを決定すると、事業主にはその取り消しを求める権利は認められませんでした。

ところが、2022年11月29日、東京高等裁判所は、事業主には訴える資格がないとした地裁判決を取り消し、審理を差し戻しました(2022年12月8日付け朝日新聞朝刊)。

 

高裁は、事業主が支払う保険料が労災が発生すると上がる「メリット制」を重視し、これにより事業主が不利益を受けるため、支給取り消しを求める資格があるとしました。

 

労災保険制度は、被災者や遺族の生活を保護することを主な目的としています。

しかし、一旦国が労災と認めた事案を事業主が取り消しを求めて争えば、その争いが続く間は、労働者の保険金支給を受ける権利は確定せず、万一、取り消しが認められれば、支給された保険金を返さなければならない事態も発生します。

これでは、労働者や遺族の立場はとても不安定になり、労災制度の趣旨を没却するものにほかなりません。

 

12月5日には、過労死弁護団全国連絡会議などが厚生労働省に最高裁に上告するよう要請しました。

 

現在、国の有識者検討会で、事業主の保険料引き上げについての不服申立等について検討されており、抜本的な対策が早急に求められています。

 

 

 

 

 

 

 

 

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