雇用主が労働者に支払う給与(賃金)は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないと法律は定めています(労働基準法24条1項)。
これまで、その例外としては、労働者が個別に同意すれば、労働者が指定する本人名義の預貯金口座などへの振込の方法で支払うことが認められていました(労働基準法施行規則7条の2)。
これに加えて、昨年11月に省令が改正され、2023年4月からは、給与をスマートフォンの決済アプリなとで受け取れるデジタル払いも可能になります。
電子マネー等の取扱事業者の申請が4月1日以降始まり、厚生労働省が審査で認めた企業が対象となります。
審査には数ヶ月かかると言われています。
雇用主が、職場に導入する場合には、労働者の過半数代表者等と一定の事項について労使協定を締結する必要があります。
その上で、個別に労働者の同意を得る必要があります。強制はできません。
ただ、一番の問題は、電子マネー事業者が経営破綻した際の利用者の保護です。
銀行口座なら、銀行が破綻しても、預金保護制度によって元本1000万円が保護されます。
厚生労働省では、事業者に対しては破産等による債務の履行が困難になった際には速やかに保証するしくみを求めていますが、実際に破綻した場合にそれが機能するかは不透明です。
また、事業者への不正アクセスによる個人情報流出の問題もあります。