富山市の電気設備工事会社に勤める男性(当時62歳)が出血性胃潰瘍を発症して死亡したのは長時間労働などが原因だとして、富山労働基準監督署は、2023年5月、労働災害と認定しました(2023年6月4日付け朝日新聞朝刊)。
国の労災認定基準では、長時間労働や業務による心理的負担などとの因果関係が医学的に確立したものとされているのは、脳・心臓疾患あるいは精神障害に限られています。
これら以外の病気には認定基準がありません。従って、消化器系の病気で労災が認められるケースは極めてマレです。
本件では、富山市の男性Aさんは、電気設備工事会社の技術者でしたが、2020年8月の定年退職後も再雇用されていました。血圧が高く、糖尿病の持病もありました。
放送局の建設現場の責任者となり、残業が増え、深夜帰宅・早朝出勤が増えました。
2021年12月に死亡する直近1ヶ月間の時間外労働時間は、過労死ラインを大きく越える約122時間だったそうです。
国が定年後の再雇用などを推し進める中で起こった労災でした。
脳・心臓疾患や精神障害以外でも、業務の過重性が認められれば、労災認定される可能性はあります。これまでも、喘息・てんかん・十二指腸潰瘍などの事案で労災認定がされています。
また、国は、高齢者の再雇用のみを推し進めるのではなく、高齢労働者が安全で働くことができるような環境対策が求められています。