2024年3月下旬、元依頼者のFさんから法律相談を受けました。
裁判所から債権差押命令が届き、年金が振り込まれていた銀行の預金口座が差し押さえられたとのことでした。Fさんは命令が届き、驚いて、すぐに事務所に来られました。
Fさんは、78歳の一人暮らしの男性で、無職で持病もあり、年金が唯一の生活の糧でした。
債権者は、債務者の公的年金自体を差し押さえることはできませんが、それが一度、債務者の銀行口座に振り込まれると、差し押さえることが可能となります。
ただ、民事執行法153条に、こういう場合における救済の規定があります。
差押えによって、一般的な生活水準と比較して債務者の生活に著しい支障が生じる場合(例えば、生活が成り立たなくなるような場合など)に、債務者の申立てにより、差押えの範囲を変更(減縮)するかどうかを裁判所が決定する制度です。
そこで、私は、Fさんに上記の申立をすることを勧めました。
申立ての方法は、さほど難しいわけではありませんが、債務者の生活状況などを書面にきちんと書き資料も付けて裁判所に提出しなければなりません。
Fさん一人に任せるのは心配だったので、翌日、再度、年金受給証明書や非課税証明書など生活状況がわかる資料を持参の上、事務所に来てもらいました。そして、生活状況などについては、私がFさんから聴き取って文書を作成しました。また、併せて、債権者への支払の一時禁止の申立てもすることにしました。
Fさんは、その足で、京都地方裁判所に申立書と資料を提出しに行きました。
申立てがあると、裁判所は、申立書などに不備がないかを審査し、不備がなければ、申立人(債務者)に必要な資料の提出を求めます。そして、次に、相手方(債権者)に反論などの提出を求め、その上で、裁判所は判断をします。
その後、時々、Fさんに電話をして状況を尋ねましたが、債権者への支払の一時禁止はすぐに決定されましたが、最終の結論は、なかなか出ませんでした。
4月下旬のGW前に、やっと裁判所から決定が届いたそうです。
決定主文は、「債権差押命令を取り消す」というもので、これでFさんの差し押さえられた預金は全部引き出せることになります。
しかし、すぐに引き出せるわけではなく、決定が債権者に届いてから不服申立がなく1週間経過すると、やっと決定が確定して、預金が引き出せるようになるのです。
GW明けに、Fさんの携帯電話に架電すると、つながらなくなっていました。
「電話代が払えなかったんだろうか」「持病が悪化して入院したんだろうか」などと心配しましたが、その後しばらくして、電話もつながるようになり、聞くと、やはり電話代が払えなくなっていたようでした。
決定も確定し、預金も引き出すことができたと聞き、とても安心した次第でした。