家政婦兼介護ヘルパーとして要介護者の家庭で住み込みで働いていた女性(当時68歳)が急死したのは、過重労働が原因として、東京高裁は、2024年9月19日、労災と認めました。
一審の東京地裁は遺族の請求を棄却しており、原告遺族の逆転勝利となりました。
実は、労働基準法には、「この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない」という条文があります(116条2項)。
この「家事使用人」というのは、住み込みの「女中」で家族も同然だから「労働者」ではない、という、なんとも時代錯誤な条文がまだ残っています。
本事案では、女性は、東京都内で訪問介護事業と家政婦の紹介あっせんを営む会社に登録。そこから派遣されて、2015年5月に要介護5の高齢女性宅に1週間泊まり込んで家事や介護に従事していましたが、勤務を終えた日に急性心筋梗塞で倒れ、翌日亡くなりました。
東京高裁は、家事と介護で、働く場所も労働時間や賃金も明確に分かれておらず、派遣元会社が女性に家事を指示していた実態もあったと認定。女性は、労基法の定める「家事使用人」にはあたらないと判断。女性が介護と家事で1日平均15時間の労働を1週間続け、週の労働時間が105時間に達したことを踏まえ、「短期間の過重業務」にあたるとして労災と認めました。
東京高裁は、労働実態を直視した判決でしたが、女性は2015年に亡くなっており、労災認定までに約10年もの年月が経過しています。あまりにも長すぎます。
国は、早急に、労基法116条2項の法改正を検討すべきです。