民法には「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する」という規定があります(民法772条2項)。これまでは、離婚後300日以内に生まれた子がたとえ別の男性の子の場合でも、「嫡出否認」の手続が取られない限り前夫の子とされてしまいました。
従って、別の男性の子を出産した母親が出生届を出さずに子が無戸籍になるという問題がありました。
そこで、民法が改正され(2024年4月1日施行)、民法772条2項の規定は維持されつつ、離婚後300日以内でも女性が再婚した後に生まれた子は新しい夫の子と推定するという例外規定が新設されました。
また、「嫡出否認」についても、これまでは否認できるのは「夫」だけに限られていましたが、母や子にも拡大されました(民法774・775条)。
そして法改正があった場合、改正法の内容は施行日以前には遡らないのが通常ですが、国は、施行前に生まれた子についても2025年3月末までに限って、母子側が嫡出否認の申立ができる救済制度を設けました。
しかし、2025年2月26日付け毎日新聞によると、救済制度が無戸籍問題の解消にはつながると期待されていたにもかかわらず、無戸籍の解消が進んでいない現実があることがわかりました。
その理由としては、母や子が嫡出否認手続をしようとすると、前夫を相手に家裁に調停を申し立てなければならず、前夫と関わりたくなかったり、子の存在を知られたく無かったりする場合には利用することが困難となります。
無戸籍児の解消の問題は重要です。
2025年4月以降も無戸籍児が存在しているような場合には、抜本的に解消の方策を再検討する必要があるのではないでしょうか。