ある事件の弁護人になった。
犯罪名を見て内容を調べようと、普段使っている刑事用の簡易六法を見たが、載っていない。
それもそのはず、刑法施行前にできた法律がまだ生きている。刑法ができたのが、明治40年4月24日とかなり古い。時代も変わっていることから、その後何回も改正され、私が受験生の頃勉強していた刑法の内容とも大部と異なってきている。
明治の終わりにできた刑法。それよりさらに古い 「決闘罪に関する件」
明治22年にできたもので、当時「果たし合いは罪ならず」などといわれていたところに、一石を投じたもののようだ。
これまでほとんど使われることがなかったといわれているが、最近、暴走族や暴力団の抗争に関して刑法よりも緩やかな要件で犯罪としてしょっ引けると考えたからか、ここのところ増えてきているらしい。
ただ、刑法ができる前の法律だから、そのまま条文通りには適用できない。
これまた明治にできた刑法施行法(明治41年3月28日)によって、内容が変わっている。
科される刑罰は、「重禁固」とあるが、これは、懲役と読み替える。罰金を付加するとあるが、付加しないことにする。など。
それは兎も角、処罰しやすいからと注目されるのは仕方ないが、弁護人の立場からすれば、「決闘」の定義さえはっきりしてないのに、決闘に「挑みたる者」「応じたる者」「行いたる者」「立会を為した者」などどうやって特定するのか疑問がわいてくる。
下手をすると、喧嘩の仲裁に入っただけで、『逮捕』なんてことにもなりかねない。
罪刑法定主義という刑事事件の大原則を極めて軽視している日本の司法の下で、こんな曖昧な犯罪を実質復活させるのは、本当は危険きわまりないことなんだけどなぁ。