建物を建てる場合、境界線から50センチメートル以上離さないといけないというルールがあります(民法234条)。 ですので、原則どおりだと、家と家の間には1メートルの空間ができるはずです。 ただ、それとは違う慣習があればそれによるのですが(236条)、どんな慣習があるのかは地域により異なることもあって正直はっきりしないことがむしろ普通でしょう。
京都の町並みで、そんな原則どおりに家が建っているところは返って少ないかもしれません。
それは兎も角、家を建て替えようとしたところ、突然境界争いが表面化することがよくあります。 実は、役所の図面でも、はっきりしていないところがかなりあります。 建築が終わってしまうと、越境していても回復することは非常に困難となってしまいます。
では、これをどうすれば解決できるのでしょうか。
土地の境界(公法上の境界で、筆界(ひっかい)ともいいます)について争いがある場合、これまでは「境界確定訴訟」によって定めるしかなかったのですが、2005年には筆界特定制度が創設されました。
これは、境界紛争の当事者から申請があった場合に、各地の法務局長が専門家を筆界調査委員に任命して、法務局に新設する「筆界特定登記官」が筆界調査委員の意見を参考にしながら境界を特定するというものです。
ただ、この「筆界特定」によって境界を特定しても、実は、新たな筆界の形成、確定までの効力はありません。 ですので、やはり従来の境界確定訴訟も必要となります。
実際に境界について争いが生じる場合、境界石などの目印になるものがない場合が多く、ひさしなども空間的に重なっているケースもあって、もともとどうなっていたのかよくわからないことも多々あります。 測量図や登記所の公図、古地図、土地の利用状況、昔の事情を知る近所の人の話など、いろんな資料に基づいて決めるしかありません。 ただ、一般の訴訟と違い、裁判所は争いになっている当事者の主張を無視して独自の判断で境界の位置を決めることもできます。 境界争いはまさに隣の人との争いになるので、できれば避けたいところですが、紛争を今後に残さないためにもある時期はっきりさせるようにした方がいいのかもしれません。 放っておくと、時効取得とか主張されかねませんので、権利は自分で守る必要があります。
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