1. 日野町事件高裁決定【再審開始を維持】
岡根弁護士のぼやき論壇

日野町事件高裁決定【再審開始を維持】

2月27日午後2時ちょうど、大阪高裁の7階会議室で、日野町事件再審請求についての決定書が請求人及び弁護人に手渡された。今回、大阪高裁では、渡す前に、担当書記官から主文を口頭で伝えます、との説明があり、「主文は、抗告を棄却する、です」と伝えられた。大阪高裁でも、再審開始という判断が示された瞬間だった。請求人である阪原さんの長男は、思わず机に顔を埋めた。そこに同席していた弁護団10数名からは思わず拍手が沸き起こった。

主文を確認した後、旗出し役の若手の弁護人2名(うちの事務所の佐藤くんと御池事務所の三角さん、いずれも京都弁護士会所属です)が、「不当決定」と記載された旗だけはその場に残し、支援者や多くのマスコミが待つ裁判所入り口を目指して駆けだしていった。その間、われわれは、請求人等と握手を交わすなどしながら、7階窓から、いわゆる「旗出し」の瞬間を眺めた。いい眺めだ!

高裁でも、再審開始が維持された。大いに評価できる結果である。(まあ、個々の内容については、いろいろあるので、ここでは触れないことにします。)

高裁での決定についての特別抗告という異議申立の期間は、5日間である。その間に、抗告の理由も付して申し立てなければならない。要は、一般の控訴や上告のそれぞれの理由書を(普通は控訴状等を提出したあと50日くらいの間に出す)5日間で完成させなければならないということである。今回は、再審開始が維持されたので、弁護団で作成する必要はない。

問題はそこではなく、検察による特別抗告は、絶対に許されない、ということである。日本の再審がモデルとしたドイツの法律では、とうの昔に(50年以上も前)検察による開始決定に対する不服申立はできなくなっている。当然のことだ。現憲法が制定され、2回危険の禁止から不利益再審(無罪判決が出たのに有罪だとしての再審申立)は禁止された。したがって、刑事事件における再審は、冤罪被害者の救済の制度であることが明白となった。そうだとするなら、救済に背を向ける開始決定への不服など認める必要もないしそれは有害でしかない。検察が、なお有罪であると考えるのであれば、その後に行われる再審公判で有罪立証の活動をすればいいだけのことである。だから、裁判をもう一度やり直すかどうかという再審申立段階で時間つぶしになるだけの検察による異議は、本来現行法の解釈としても認めるべきではないのである。

3月2日には、弁護団から最高検察庁に、特別抗告はするな、という申し入れを行い、記者会見も行った(ネットニュースで見られます。なお、大阪高検に対しては2月28日に申し入れ済み)。検察庁には、真の意味で、公益の代表としての行動を期待する。特別抗告をするな、という声を広げていきたい。ちなみに、特別抗告の期限は、土日があるので3月6日(月)である。

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